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新中計でセイコーエプソンが狙うもの(前編)--プリンタ事業で常識に挑戦 - (page 3)

大河原克行

2016-05-22 08:00

 エプソンのプリンタ事業は、プリンタ本体を安くして、インクカートリッジで儲けるというビジネスモデルだったが、大容量インクタンクモデルは、まさに、「インクの売り上げ、収益に依存せず、本体で収益を上げるビジネスモデル」(碓井氏)という新たな挑戦である。

 その成果はすでに出ている。現在、セイコーエプソンにおける大容量インクタンクモデルの構成比は、プリンタ出荷量全体の4割近くにまで達しようとしており、しかも、大容量インクタンクプリンタを積極展開した2012年度を底にインク全体の売上高は年々上昇し続けているのだ。

 そして、4つめが、商業・産業用途向けプリンタの開発に本格的に着手した点だ。この市場参入でも、基本となるのはPrecisionCoreだ。同プリンタヘッドによって、高品質、高速を実現したことで写真印刷、印刷プルーフ、POP作成、教材作成、サイネージやテキスタイル、ラベルプリンティングといった商業・産業プリンティング向けの製品を次々と展開していった。

 セイコーエプソンでは、SE15期間中の2012年度から従来、「プリンタ事業」と呼んでいた事業セグメントを「プリンティングシステム事業」へと変更した。

 「プリンタを1台売れば終わりではなく、ソフトウェアをセットにしてソリューションとして展開していく。商業・産業用途ではPrecisionCoreという新たな技術を活用し、ソリューション展開に踏み出す素地ができた」とする。

 最後が、レーザープリンタの開発リソースの一部を新たな製品開発につなげた点だ。それが、オフィス内で紙を再生する製紙機「PaperLab」である。レーザープリンタの新たな技術として開発していた液体現像方式に携わっていた開発者をPaperLabの開発にシフト。2016年度内の製品化を目指している。

 「PaperLabは、オフィスで躊躇うことなく紙を使ってもらうための製品。レーザープリンタの開発メンバーには、もっと価値のあるものを作ってもらいたいと考えた。紙を使ってコミュニケーションを便利にするプリンタを作るだけでなく、オフィスで紙を作り、安心して紙を使える環境を作り上げてほしいということを要請した」

 その結果、完成したのが、これまでにはなかった、オフィスで紙を再生するという製品だったのだ。

新中期経営計画に込めたもの

 こうしてみると、エプソンは、プリンタ領域でインクジェット技術にフォーカスを定めることで、それまでのコンシューマー以外の領域にも積極的に展開。その強みを生かした事業展開と、新たなビジネスを創出することに成功した。

 「インクジェット技術が使えるのはコンシューマープリンタだけという先入観がなくなり、この技術をどう応用するのかといったことを社員全員が考えるようになった。それが新たな市場への参入、新たなビジネスの創出につながっている」と碓井氏は語る。

 まさにSE15で掲げた「強みを活かせる分野に集中し勝ち残る」「集中する事業は事業基盤を徹底的に強くする」「保有する技術や販売の資産から、新たな製品と事業を生み出す」という3つの方針を実現してみせた。

 そして、この姿勢は、国内で圧倒的シェアを誇るプロジェクタを軸とするビジュアルコミュニケーション分野、高性能が高い評価を得ているセンシング技術などを活用したウエアラブル分野などでも同じだ。

 こうしたSE15の成果があるかからこそ、碓井氏は会見でも強気の発言を繰り返したのだろう。

 「エプソンの強みにフォーカスし、事業構造改革を完遂させると同時に、お客さま視点に立ったビジネスモデルへの転換を推進させた。また、成長領域を定め、これまでのエプソンにない、新しい領域の開拓にも取り組んだ。強いコアデバイスの開発から製品の企画、設計、モノづくり、販売、サービスまで一貫して提供する垂直統合型ビジネスモデルなどエプソン流のバリューチェーンのベースを確立させることもできた」とSE15の成果を総括する。

 その一方で「転換と開拓に挑戦したものの、期間内にやり切れなかった事業、領域があった。これらの残された課題については、今後取り組むべき内容として、新しい中期経営計画の中で形にしていく」とする。中には「2年遅れ」とするものも含まれているという。その反省材料はどこにあるのだろうか。

中編に続く

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