(中編から続く)
セイコーエプソンが打ち出した2016年度から10年間の長期ビジョン「Epson 25」は、最終年度となる2025年度までを3つの期間に分けて、具体的なアクションプランとして、中期経営計画を実行することになる。
その第1ステップとなるのが、2018年度を最終年度とする3カ年の「Epson 25第1期中期経営計画」となる。Epson 25第1期中期経営計画では、次の4つの基本方針を掲げている。
- SE15で「転換と開拓」が実現した事業領域は、その優位性をさらに強化し、成長を継続する。「転換と開拓」が遅れている事業領域は、すみやかに課題に対応し、成長軌道を確立する
- Epson 25で目指す「スマート」「環境」「パフォーマンス」の顧客価値を製品やサービスの形に創り上げ、成長を確実なものにする
- Epson 25を実現するために短期的な利益成長を勘案しつつも、必要な経営資源は積極的に投下する
- 新しいビジネスモデルを早期に確立し、お客さまにお届けする仕組みを充実する
これらの基本方針をもとに、5つの事業領域における方向性を示してみせる。

セイコーエプソン 代表取締役社長 碓井稔氏
プリンティング事業では、インクジェットプリンタヘッド技術「PrecisionCore」搭載モデルのラインアップ強化や大容量インクタンクモデルの機能強化に取り組むとともに、課金ビジネスへの展開を加速することで、レーザープリンタの市場置き換えを加速させる。
開発中のラインヘッドを完成させ、レーザープリンタを凌駕する性能とコスト競争力を極めることで、ハードウェアでの競争優位を確立。さらに、顧客ニーズにあった販売オペレーションとサービスなどの組織基盤を整備し、新規領域での確かな成長を実現。将来の飛躍的成長の基盤を創る考えを示す。
ラインアップ拡大に備え、生産能力強化するほか、事業拡大のスピードアップのためには、協業やM&Aなども検討していくという。
「オフィスプリンティングの環境をインクジェットによって大きく変えたい」と代表取締役社長の碓井稔氏は意気込む。
その中でも最大のテーマが複写機市場への本格参入だ。
これまでにも「スマートチャージ」によって複写機の下位モデルの置き換えを提案してきたが、碓井氏は「Epson 25第1期中期経営計画の早い時期にPrecisionCore技術を活用したラインインクジェットによる超高速コピー機を製品化する」ことを明言。複写機上位モデルをターゲットとした製品を提供していくことになる。
「これまでの電子写真方式の複写機と似たような性能の製品は出さない。電子写真方式の複写機にはできない圧倒的なプリントスピードを実現し、トータル価格も圧倒的に安いものを提供する。特に消耗品ははるかに安くなり、ランニングコストでの優位性を発揮できる。使ってよかったと思ってもらえる製品を投入できる」と自信を見せる。
だが、性能面で優位性を持った製品を投入したとしても、エプソンは、この市場における販売網、サービス網がぜい弱だ。いやほとんど持っていないといってもいいかもしれない。しかも、この市場は市場全体の6割をキヤノンやリコー、富士ゼロックスといったメーカー系列販社が占めており、そこに割って入るのは至難の業だ。
つまり、残り4割の独立系販社にいかに扱ってもらえるか、そして、それを短期間にエプソン製品を取り扱ってもらえる販売、サービス網の確立へとつなげられるかが鍵となる。