あるハッカーが自らの技術を駆使して、政治的な主張を行った。銀行から1万ユーロを盗み出し、過激派組織「イスラム国」(IS)に占拠された土地の近くに拠点を置く反資本主義クルド人グループに提供したのだ。
このハクティビスト(監視ソフトウェアを手がけるHacking Teamなど、大きな注目を集めた攻撃を行ったハッカーと同一人物と考えられている)が米国時間5月18日、Redditのフォーラムを通して明かしたところによると、この人物はある銀行から資金を盗み出して、ロジャヴァに拠点を置くクルド人グループに寄付したという。
ロジャヴァはシリア北部の自治区。現在ISとトルコが保有する領土に隣接しているが、ISもトルコも交易に前向きではないため、やがて食糧や必需品が不足するとみられている。
25ビットコインに相当するこの資金は、Rojava Planのクラウドファンディングキャンペーンを通して寄付された。このキャンペーンでは、輸出入の制限のせいでロジャヴァが苦しんでいる実情が伝えられている。
Rojava PlanのDeniz Tari氏はArs Technicaに対し、次のようにコメントした。
「われわれは現在、多忙を極めている。ロジャヴァは交戦地帯なので、オンラインに接続するのが難しいときもある。この資金の使途については(中略)われわれのキャンペーンページも見てほしい。そこで、資金の使い道について概説している」
同キャンペーンのビットコインアドレスを見ると、寄付は5月5日に行われたようだ。本稿掲載時点で、Rojava Planは約3万3000ユーロを調達している。この資金は、将来の収穫に向けて肥料を作る道具と労働者の賃金に使われる。
ハッカーが自らの技術を政治目的に利用することがあるが、この事件もその一例だ。今回、ハッカーの働きを賞賛する者もいれば、資金調達方法に不快感を示す者もいる。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。