数年間バッテリ交換いらず--策定間近の通信規格「NB-IoT」が変える社会の未来像

Simon Glassman (u-blox AG ストラテジックパートナーシップ部門シニアプリンシパル) 2016年05月30日 07時30分

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 モノのインターネット(Internet of Things:IoT)はすでにおなじみだと思うが、「狭帯域IoT(Narrow Band IoT:NB-IoT)」という言葉を聞いたことがあるだろうか?

 NB-IoTは既存の移動体通信網を利用した、新しい低消費電力広域(Low Power Wide Area:LPWA)技術の中の一種類である。この技術を使用すれば、地下室やマンホール、電気やガスなどのメーターキャビネット、都市部や都市部から遠く離れた場所、高速道路、建物の奥深くなど、事実上どこでも無線通信が可能となる。

 低速ではあるが、高い場所や遠い場所にあるなど手の届きにくい場所にある機器と通信できるようになり、機器をネットワークに接続することで、多数の機器のサポートができるようになる。使用頻度の低い少量のデータのみを送受信するため、通信料金の価格は低く抑えられる。

 また、通信デバイスのコストは驚くほど低価格で提供され、消費電力も低く数年間はバッテリの交換の必要がなく動作できるのが特徴だ。IoT関連ベンダー各社が現在NB-IoTに注目し、導入を検討している理由は以下となる。

  • 従来のネットワークを活用することでインフラを新たに構築する必要がない
  • 広範囲のカバレッジに対応しているだけでなく、地下などを含めた屋内カバレッジにも優れている
  • 大量の機器のサポートが可能
  • 安全と信頼性(後述)
  • 機器の低消費電力化
  • 低価格な部材費

 今のところNB-IoT規格は“完成間近”となっており、まだ規格が策定されていない段階ではあるが、規格の策定作業は驚くべき速さで進められている。標準化組織である3GPPは、2015年9月にライセンス認証を受けたオペレーターの周波数帯域幅を用いたLPWAネットワークのNB-IoT導入のための共通アプローチに合意しており、この6月にもNB-IoT規格のリリースが期待されている。

 しかし、規格の開発を急いだからといって、決して不完全であるということではない。

 NB-IoTは、最終的な成功のカギとなる機器の低消費電力化と最適なソリューションアーキテクチャを保証するため、多くの作業を経て明確に策定されている。VodafoneやHuaweiを筆頭とする、各国の大手通信会社や通信デバイス関連メーカーなどで設立を予定されている業界団体のNB-IoT Forumに参加する各社は、そこで現実のシナリオにおけるNB-IoT技術のテストを重視した。

 たとえば、2015年11月にVodafoneとHuawei、u-bloxがスペインで行った商業技術試験では、VodafoneとHuaweiはスペインの事業者のモバイルネットワーク上での技術統合に成功し、初の準規格NB-IoTメッセージを現実のシナリオにおけるテストとして水道メーターに組み込まれたu-bloxのモジュールに送信することができた。

 水道メーターは、設置場所へ物理的に到達することが困難であることも含め、大量モニタリング機器の代表例である。たとえば、地下や金属カバーの後ろなど、電源が利用できず、他のタイプの信号では到達できないような場所に設置されることがある。

 NB-IoTの応用範囲は、ビルのオートメーション関連機器、人や動物の追跡、またスマートシティに関連する機器にまで広がっている。スマートシティ関連では、地方自治体がNB-IoTを利用して、街灯の制御、ゴミ収集のタイミングの判断、無料駐車スペースの確認、道路状況の調査などができるようになるだろう。これらすべてに関連する機器は10年以上のバッテリ寿命が要求されるが、NB-IoTの規格に準じた機器は超低消費電力で、そのバッテリ寿命に対応する。

 スマートシティ関連での応用例として、あくまでもプロトタイプ的なものではあるが、u-bloxがMobile World Congress 2016で実施した「ゴミ管理ルート最適化」のデモンストレーションを例に挙げる。このデモで紹介したシステムは、準規格NB-IoTとu-bloxの低消費電力Bluetooth対応センサとBluetooth/Wi-Fi IoTゲートウェイモジュールを統合したものだ。

 ゴミ箱の開閉や満杯かそうでないかを検知し、その情報をNB-IoT経由でクラウドに送信。その後、ゴミ収集車の最適なルートを計算することで収集ルートを最短にし、収集車の燃料費、二酸化炭素排出量、ゴミ収集の所要時間を削減するシステムだ。これはあくまでも一例だが、地方自治体はこのような形でNB-IoTの恩恵を受けることができる。

 NB-IoTの迅速な商用化を進めるべく、モバイルオペレーターとネットワークインフラストラクチャプロバイダー各社は「NB-IoTオープンラボ」を開設する予定であり、VodafoneとHuaweiは共同で英ニューベリーに立ち上げたことを発表している。NB-IoTオープンラボは、NB-IoTエコシステムの創出とサポートのための適切な環境を提供し、アプリケーション開発者、システムインテグレーター、サービスプロバイダーによるエンドトゥエンドの開発相互運用試験を支援する。

 u-bloxは、NB-IoTがシステムの設計、導入、市場展開を大幅に容易化すると考えている。ライセンス認証を受けている周波数帯域幅を使用して、明朗な料金形態や質の高い関連サービスの提供をグローバルなプレーヤー各社から受けることができるだろう。

 NB-IoTは他の何かから派生した規格ではなく、明確にIoT用途のために設計されている。これによってインフラや端末装置のサプライヤーの大きなネットワーク網が形成されることを期待したい。

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