――Microsoftはどのように見ていますか?
Microsoftにとって複雑なビジネスアプリケーションの世界は、彼らのコアではないでしょう。クラウドのビジネスも、OfficeやAzureが中心であり、まだまだERPは優先順位のかなり下の方にあるはずです。実際、(Satya)Nadella氏の口からERPの話を聞くことはないですよね。
――ERPにインテリジェンスを組み込む話が基調講演で出ました。インテリジェンスを組み込むと何が変わるのでしょうか?
インテリジェンスは今やシステムのさまざまなところに存在します。NetSuiteのERPは、旧来の一般会計(General Ledger:GL)のプロセスをコンピュータ化したERPとは作り方が異なります。われわれはこういった古いGLベースのERPを“Dumb GL(のろまなGL)”と呼んでいます。GLベースだと、財務諸表を作るための機能が中心となっています。
NetSuiteは、日々のビジネスプロセスを効率的に回すシステムになっています。そのため、ビジネストランザクションが核となっているのです。このトランザクションから生まれるものを生かそうとの発想は、もともとありました。なので、インテリジェンスを取り込んだ予測型の機能はすぐにNetSuiteに入れることができたのです。
NetSuiteを使えば、トランザクションを見てその結果から推奨する機能がすぐに実現できるでしょう。たとえば受注履歴を見て、次の受注を予測するのです。アーキテクチャがもともとこう言ったことがやりやすいものになっています。結果的に、プロセスの自動化もできるようになります。たとえば、注文に対し、その商品を顧客に発送するのなら、どの倉庫から出荷するのが効率的かを自動で判断しプロセスを回せます。
それと、クラウドのパワーは、発生する大量データを処理するのに向いています。これらで、人の次の行動を決めるのに有効な情報を提供し、自動でプロセスを回せるようになります。
Larry Ellisonは今も昔も大事なアドバイザー
――創業者でもあるOracleのLarry Ellison氏からは、どのようなアドバイスを受けていますか?
Larryは、創業時からNetSuiteに影響を与えています。とはいえ、ここ最近は彼の関わり方が少し変化してきました。当初は毎日のように電話をしてきて「ビジネスの進捗状況はどうか、目標は達成できているのか」と聞いてきました。
それがNetSuiteが大きくなり上場してからは、こちらから電話するようになっています。年に数回、こちらから連絡し戦略を共有するのが最近の主な関わり方です。
実はLarryからのアドバイスは、基本的にはいつも同じ話に帰結します。それは「セールス担当を増やせ」「プロダクトの水平展開を増やせ」の2つです。なので、この2つをビジョンに落とし込んで、Larryと話をするようにします。
Larryは今も、NetSuiteにとって素晴らしいアドバイザーです。彼のビジネスに対する問題のとらえ方はかなりユニークなものがあります。
ところでLarryは、われわれが言うことの逆を言ってくることが多いので、人の意見の逆張りをする人物なのかと思い、わざと考えていたことと反対の意見を伝えたことがあります。そうしたらなんと、彼はその意見を肯定したのです。この時もLarryは、やっぱり面白いアイデアを持っている人だなと思いました。
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――NetSuiteでは、ISV(独立系ソフトウェアベンダー)やSIベンダーといったパートナーとのエコシステムが順調に育っているように見えます。今後日本のISVやSIには、どのようにNetSuiteと関わってほしいと思っていますか?
パートナーシップの戦略は、日本と世界で特に変わるものではないと考えています。SMB(中堅中小企業)のマーケットでは、中堅クラスの付加価値リセラーが重要な役割を担っています。とはいえ、彼らは今までクラウドベースのアプリケーションを扱っておらず、既存のビジネスモデルに合わないところもあるでしょう。
なので、彼らがクラウドベースのビジネスに移行できるよう手助けしていきます。そのためにNetSuiteでは、サブスクリプション型のビジネスで発生する繰り返しの売り上げから大きな部分をパートナーに還元できるようにしています。
今後は既存のアプリケーションを更新する際に、再びオンプレミスでやりたいと考える顧客は皆無なはずです。なのでその際に、顧客窓口となるパートナー企業がNetSuiteのようなクラウドを持っていなければ、顧客は満足しないでしょう。そのため、日本でもよりパートナーとの関係はさらに深め、顧客が満足できる体制を整えていく必要があると考えています。