IDCのアナリストAl Hilwa氏は以下のように述べている。
Salesforceの中核であるCRM製品は、自社データセンター内のOracleデータベースを用いた内部スタック上で稼働している。その一方でSalesforceは、AWSを採用するその他のテクノロジ企業を買収してきている。最も有名な例は、PaaSを手がけるHerokuという企業の買収だ。こういった規模でのコミットにより、Salesforceは自社のコアビジネスのスタックを多様化させる方向へと舵を切っていく可能性が高い。とは言うものの、これには長い時間がかかるだろう。
AWSとSalesforceの関係は最終的に、IBMとSAPの関係にひねりを加えたようなものになる可能性がある:IBMとSAPは、何年にもわたってハードウェアやソフトウェアの統合関連だけでなく、コンサルティングやITサービスでも緊密な関係を維持してきている。AWSとSalesforceの関係は、IBMとSAPの関係にひとひねり加えて新時代版にしたものになるだろう。Salesforceは事実上、AWSをベースにしてサービスを構築していくと決定した。ITバイヤーの観点から見た場合、Salesforceは実質的に、AWSにお墨付きを与えたことになるわけだ。その結果、企業はAWSをプロバイダーとして真っ先に検討するようにもなるだろう。筆者は、AWSとSalesforceが最終的に、企業向けに事前に統合された、進化したスタックを提供すると確信している。また、Salesforceは同社の中核であるSaaSからIaaS部分を切り離すことさえ考えられる。現在のところ、価格体系はひとまとめになっているが、より多くの企業が自社のAWSでの実装をSalesforceへの実装に移行したいと望むようになるだろう。SugarCRMは既に、同様の計画を遂行している。
迅速な世界展開:AWSを推奨パブリッククラウドプロバイダーに選んだことで、Salesforceは実質的に、事前の投資なしに世界の各地域に向けてサービスを迅速に展開していけるようになる。Salesforceは、米証券取引委員会(SEC)に対して四半期毎に提出する書類のなかで、以下のように記している。
2016年4月、当社は特定のインフラサービスを提供するサードパーティーのプロバイダーとの4年間にわたる取り決めを交わした。この取り決めに基づき、当社は2017会計年度に7000万ドル、2018会計年度に9600万ドル、2019会計年度に1億800万ドル、2020会計年度に1億2600万ドルを支払うことになる。