独立行政法人情報処理推進機構(IPA)は4月27日、「IT人材白書2016」を発行した。本書はIPAが毎年、IT企業やユーザー企業、大学等教育機関を対象としたIT人材動向調査、およびIT技術者個人を対象とした意識調査を行い、調査結果をまとめて発行しているもの。
今回の白書では、IPAによる2015年度調査結果を元に、「わが国のIT人材の全体像」を紹介し、IT企業の事業展開やユーザー企業のIT外部サービス利用動向に関連した分析も行っている。
主な結果は以下の通り。
IT企業の現在の事業、今後新規/拡大を予定している事業
IT企業の事業展開と、それに対するIT人材の不足状況について質問した。「現在実施している事業」は、「(発注者の意向に沿う形の再委託もある)従来型の開発、運用、SI」の割合が70.6%と最も高く、同じく受託系の事業である「(自社が得意な業務分野を生かした)提案型の開発、運用、SI」が53.3%、「(自社が得意な技術を生かした)提案型の開発、運用、SI」が46.7%と続いている。
また、これらの事業は「拡大を予定している」を回答した企業が多く、同時にIT人材の不足を感じる企業が多い事業でもあるという結果が出た。開発や運用、SIに関して人材ニーズが高いことがうかがえる。
IT企業が現在実施している事業、今後新規/拡大を予定している事業と人材不足(IPA提供)
「現在実施している事業」を従業員規模別に比較すると、「IoT関連サービスの開発・提供」については、他の従業員規模の企業と比較して1001名以上の企業の割合が35%と突出して高くなっている。一方、「教育研修サービス提供」と「技術者等の人材派遣」については、従業員規模による差が小さい。
IT企業が現在実施している事業【従業員規模別】(IPA提供)
一方、「今後3年間程度の間に新規/拡大を予定している事業」を従業員規模別にみると、「IoT関連サービスの開発・提供」「PaaSサービス(構築・運用)、IaaSサービス(開発・提供)」については、他の従業員規模の企業と比較して1001名以上の企業の割合が45%と突出して高くなっている。また、「組込みソフトウェア開発」も同様の傾向。
IT企業が今後新規/拡大を予定している事業【従業員規模別】(IPA提供)
1001名以上の企業が事業拡大する予定の「IoT関連サービスの開発・提供」「PaaSサービス(構築・運用)、IaaSサービス(開発・提供)」は、事業拡大意向の企業数(17.3ポイント)に対して、IT人材の不足(10.9ポイント)を感じる企業が比較的多いことが読みとれる。
IT企業の事業とユーザー企業のIT外部サービス利用傾向
IT企業が「今後3年間程度の間に新規/拡大を予定している事業」と、ユーザー企業が「今後3年間程度の間に利用の拡大/新規利用を考えているIT外部サービス」を比較すると、「PaaSサービス(構築・運用)、IaaSサービス(開発・提供)」「IDCサービス(ハウジング、ホスティング等)、データセンター」「左記以外の運用サービス等(インターネット接続、VAN、遠隔監視、受託計算等)」では、IT企業における割合をユーザー企業における割合が大きく上回っている。
IT企業が新規/拡大を予定している事業と、ユーザー企業が利用の拡大/新規利用を考えているIT外部サービスには乖離があるといえる。
IT企業が今後新規/拡大を予定している事業と、ユーザー企業が利用の拡大/新規利用を考えているIT外部サービス(IPA提供)
また、IT企業が「現在実施している事業」でパッケージソフトウェア開発・販売、ASPサービス、SaaSサービス開発・提供を選択した企業に、事業全体の売上額のうちパッケージソフトウェア開発・販売/ASPサービス、SaaSサービスの売り上げが占める割合を尋ねた結果をみると、「10%未満」の割合が52.3%と最も高くなっている。
従業員規模別では、従業員規模が小さくなるに従い「50%以上90%未満」と「90%以上」を合計した割合が高くなる傾向にある。
IT企業で事業全体の売上額のうち、パッケージソフトウェア開発・販売/ASPサービス、SaaSサービスの売上が占める割合【従業員規模別】(IPA提供)