松岡功の一言もの申す

「コグニティブ」は市民権を得る言葉になるか

松岡功 2016年06月02日 07時00分

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 IBMに続いてマイクロソフトが「コグニティブ」という言葉を使い始めた。AI(人工知能)技術を活用した注目分野を指すが、意味が分かりづらいとの声も。果たして市民権を得る言葉になるか。

マイクロソフトが「コグニティブサービス」を提供開始

 「皆さんにはこれから、当社が用意したコグニティブAPIをどんどん活用していただきたい」――米MicrosoftのSatya Nadella CEOは5月24日、日本マイクロソフトが都内ホテルで開催した開発者・IT技術者向けの自社イベント「de:code 2016」の基調講演でこう呼びかけた。

自社イベント「de:code 2016」で基調講演を行う米MicrosoftのSatya Nadella CEO
自社イベント「de:code 2016」で基調講演を行う米MicrosoftのSatya Nadella CEO

 コグニティブAPIとは、マイクロソフトがこのほど本格的に提供し始めた「マイクロソフトコグニティブサービス」のことである。具体的には、同社がこれまで研究開発に取り組んできた「Vision(視覚)」「Speech(音声)」「Language(言語)」「Knowledge(知識)」「Search(検索)」の5つのコグニティブ(認知)領域における各種APIを、クラウドサービス「Microsoft Azure」を通じて提供するものだ。Nadella氏によると、現在22個のコグニティブAPIを用意しているという。

 ちなみに、マイクロソフトのAI技術といえば、Windows 10に搭載されたパーソナルアシスタントの「Cortana」や、LINEチャットの相手をしてくれる“女子高生AI”チャットボットの「りんな」が一般ユーザーの間で話題を呼んでいるが、これらも上記のコグニティブAPIの中から必要なものを組み合わせて、同社がアプリケーションとして提供しているものである。

 Nadella氏は講演で、「これからは全てのビジネスがデジタルに移行していく。このデジタル変革にマイクロソフトコグニティブサービスを大いに活用していただきたい」と強調した。

IBMが“コグニティブ仲間”づくりに乗り出した?

 「MicrosoftのNadella CEOが昨日、自社イベントの講演でコグニティブサービスに注力すると話していたと聞いた。

 IBMは昨年来コグニティブコンピューティングを強力に推進しているが、ここにきて複数のグローバル企業が“コグニティブ”という言葉を使い始めており、これからさらに世の中に浸透していくと確信している」――日本IBMのポール与那嶺社長は5月25日、同社が都内ホテルで開催した顧客向けの自社イベント「IBM Watson Summit 2016」のオープニングスピーチでこう語った。Nadella氏の前日の発言に触れたのは、後に述べる理由があったからだ。

自社イベント「IBM Watson Summit 2016」でスピーチを行う日本IBMのポール与那嶺社長
自社イベント「IBM Watson Summit 2016」でスピーチを行う日本IBMのポール与那嶺社長

 IBMではコグニティブコンピューティングを「人間が話す自然言語を理解し、根拠をもとに仮説を立てて評価して、コンピュータ自身が自己学習を繰り返して知見を蓄える技術を活用した、コンピューティングの新しい概念」と定義付けている。そして、それを具現化したコグニティブソリューションが「IBM Watson」である。

 与那嶺氏はWatsonについて、「単なる開発ツールではなく、業種ごとのソリューションとして実績を上げつつある。すでに実用段階にあるのが最大のアドバンテージだ」と強調した。ちなみに、APIについては現在28個用意しており、今年内に50個まで増やす計画だという。

 ただ、昨年来コグニティブコンピューティングを推進してきたIBMにとって大きな課題となっていたのは、コグニティブという言葉そのものの“認知”を広げることだ。

 その意味では、与那嶺氏の発言にあるように、複数のグローバル企業が使い始めたことは同社にとって歓迎すべき動きだろう。同氏が紹介した米IBMのGinni Rometty CEOの“コグニティブ仲間”メッセージ(図)がそれを象徴している。中でもマイクロソフトが名を連ねたことは、IBMからすれば心強い限りかもしれない。それをRometty氏のメッセージで見せるあたり、IBMもしたたかだ。与那嶺氏がNadella氏の前日の発言に触れたのも同じ文脈である。

米IBMのGinni Rometty CEOの“コグニティブ仲間”メッセージ
米IBMのGinni Rometty CEOの“コグニティブ仲間”メッセージ

 マイクロソフトが“仲間”になったとはいえ、コグニティブという言葉が広く浸透するかどうかはまだ分からない。与那嶺氏もスピーチで、「まだ皆さんは聞き慣れない言葉かもしれないが、ぜひ慣れていただきたい」としきりに呼びかけていた。

 とりわけ、全社を挙げてコグニティブビジネスにまい進することを明言しているIBMにとっては、何としても浸透させたいところだろう。果たして市民権を得る言葉になるか、注目しておきたい。

ZDNet Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

この記事を読んだ方に

関連ホワイトペーパー

連載

CIO
シェアリングエコノミーの衝撃
デジタル“失敗学”
コンサルティング現場のカラクリ
Rethink Internet:インターネット再考
インシデントをもたらすヒューマンエラー
トランザクションの今昔物語
エリック松永のデジタルIQ道場
研究現場から見たAI
Fintechの正体
米ZDNet編集長Larryの独り言
大木豊成「仕事で使うアップルのトリセツ」
山本雅史「ハードから読み解くITトレンド放談」
田中克己「展望2020年のIT企業」
松岡功「一言もの申す」
松岡功「今週の明言」
内山悟志「IT部門はどこに向かうのか」
林 雅之「デジタル未来からの手紙」
谷川耕一「エンプラITならこれは知っとけ」
大河原克行「エンプラ徒然」
内製化とユーザー体験の関係
「プロジェクトマネジメント」の解き方
ITは「ひみつ道具」の夢を見る
セキュリティ
エンドポイントセキュリティの4つの「基礎」
企業セキュリティの歩き方
サイバーセキュリティ未来考
ネットワークセキュリティの要諦
セキュリティの論点
スペシャル
エンタープライズAIの隆盛
インシュアテックで変わる保険業界
顧客は勝手に育たない--MAツール導入の心得
「ひとり情シス」の本当のところ
ざっくり解決!SNS担当者お悩み相談室
生産性向上に効くビジネスITツール最前線
ざっくりわかるSNSマーケティング入門
課題解決のためのUI/UX
誰もが開発者になる時代 ~業務システム開発の現場を行く~
「Windows 10」法人導入の手引き
ソフトウェア開発パラダイムの進化
エンタープライズトレンド
10の事情
座談会@ZDNet
Dr.津田のクラウドトップガン対談
Gartner Symposium
IBM World of Watson
de:code
Sapphire Now
VMworld
Microsoft WPC
Microsoft Connect()
HPE Discover
Oracle OpenWorld
Dell Technologies World
AWS re:Invent
AWS Summit
PTC LiveWorx
吉田行男「より賢く活用するためのOSS最新動向」
古賀政純「Dockerがもたらすビジネス変革」
中国ビジネス四方山話
ベトナムでビジネス
日本株展望
企業決算
このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]