日本語版Watsonの活用例として、Watsonを日本語化したパートナーでもある、ソフトバンク 代表取締役社長兼最高経営責任者(CEO)の宮内謙氏が登壇。ソフトバンク自身が、どのようにWatsonを活用し、ビジネスにどのような影響を出そうとしているのかを紹介した。
ソフトバンク株式会社 代表取締役社長兼CEO 宮内謙氏
ソフトバンクではコールセンターの担当者支援のためのデータベースSoftBank Brainを構築している。接客に必要な知識をデータベース化し、コールセンターで受ける質問を、Watsonで分析して答えを導き出すことで、顧客との応答時間を短縮しながら、的確な回答を返すことを狙った仕組みだ。
このSoftBank Brainはコンタクトセンターからスタートしたばかりで、夏ごろには本格稼働する。今後は、ショップでの接客サポート、さらに法人営業へと利用場面拡大を進めることを計画している。お客様には分からないが、バックエンドでWatsonが稼働し、人間の作業をサポートしていく時代が必ず来る」(宮内氏)
このように自社でWatsonを利用するとともに、法人へのWatson提供も進めている。法人利用の例としては、三菱東京UFJ銀行がLINEを使って、顧客からの質問にWatsonが答えるというサービスを提供しているが、「既に国内で150社の法人が導入を検討している」(宮内氏)と法人向け販売も順調だとアピールした。
また、新しいWatsonの活用を広めるためにハッカソンも開催するなど、需要拡大の仕組みが整いつつある。宮内氏は、「リアルビジネスが始まっている」とアピールした。
実用としてWatsonを利用する例として、先行ユーザーである富士重工、かんぽ生命保険、東京大学医科学研究所が登壇したパネルディスカッションも開催した。
パネルディスカッション
富士重工業株式会社 取締役専務執行役員 武藤直人氏
富士重工では、スバルに運転支援システムアイサイトを搭載。ステレオカメラを搭載し、歩行者や自転車、先行車などを認識することができる。
「おかげさまで、アイサイト搭載車と非搭載車とで比較すると、搭載車は非搭載車に比べ、事故率が6割減少するという結果になっている。これは画期的なことではあるが、事故率がゼロになったわけではない。さらに事故を減らしていくためにWatsonを活用していく」(富士重工 取締役専務執行役員 武藤直人氏)
株式会社かんぽ生命保険 執行役 廣中恭明氏
かんぽ生命保険では年間200万件の支払い請求が寄せられる。このうち半数以上が、システム的な判断を行うことができない、人による判断が必要な案件となる。これまでは10年以上の勤務経験をもったベテランスタッフが担当してきた、判断が難しい請求に対する支援の際にWatsonを利用する。
「実務経験10年以上のスタッフが手掛けてきた難易度の高い支払い業務を、請求内容のポイントの絞り込み、過去の類似事例と判断材料の提示を、Watsonを使って実施する。人間はその後の確認、判断だけに立ち会うスタイルとすることで、処理できる件数が大幅に増えるのではないか」(かんぽ生命保険 執行役 廣中恭明氏)