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不動産業をデータとテクノロジで徹底的に可視化する--ネクストの井上高志氏 - (page 2)

山田竜司 (編集部) 吉澤亨史

2016-06-09 07:00

--このような不動産仲介の可視化をするようなビジネス、不動産テック(Real Estate Tech:ReTech)が立ち上がってきている。

 われわれはもう創業時からやっていて、言葉があとからついてきたように感じます。ソニー不動産やリブセンスなど不動産価格の可視化サービスを提供しはじめている会社がでてきていますが、なぜ同じタイミングになったのは分かりません。急にここで価格系の可視化が出てきたというのは、たまたまとしか言いようがないです。

 いくつかカテゴリでいうと、今説明したのは価格系の話なのですが、価格の可視化を統計処理で見せていくためには、大量の物件情報が必要です。不動産業界で登録義務のあるBtoBのデータベースに「REINS(Real Estate Information Network System)」というものがあるのですが、それは一般には情報公開されておらず、統計情報としても使えません。

「Multiple Listing Service(MLS)」
「Multiple Listing Service(MLS)」を利用した不動産情報サービス業の「Zillow」

 例えば米国では成約価格は不動産物件情報データベースの連携システム「Multiple Listing Service(MLS)」に記載しないといけない事項です。このデータは誰にでも使え、商用でも利用可能な「オープンデータ」です。当然、統計に使えます。それを不動産情報サービス業の「Zillow」という会社が担っています。これが簡単にビジネス化できるのは、データがすぐに入手できる米国だからです。日本は登記簿上に成約価格を記載しないので、全部独自で集めるしかないのですね。

 価格の可視化関連だと、価格を可視化しましょうという動き以外に、人気があるエリアや検索回数、などから不動産価値の将来予測をしていく動きもあります。過去の賃料や価格の変動を、特定エリアの10年後の人口動態から予測し、今の価格を決めるといった、金融商品とも言えるようなデータ解析が可能になっています。

 また、AIで不動産接客のイノベーションをする動きがあります。われわれの場合、電話やウェブ、カウンターなどどういう形でコンタクトしてきても、顧客の要望にあったものをオペレーターが機械学習やビッグデータ解析などの結果から提案していく予定です。

 これまでは750万件のデータベースを提供して「中から探してください」という感じだったのですが、AIによりこの精度が上がり素早く的確になる予定です。今までは不動産の担当者の感覚や経験などで「何となく」でやっていたものを、価格から検索して絞っていき最適なものを素早くご提案する接客ができるわけです。これらの接客サービスを無料で提供する構想を持っています。

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