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ディープラーニングも簡単活用、マイクロソフトのクラウドを使ったAI実践法 - (page 2)

谷川耕一

2016-06-06 15:56

PaaSのAI機能を活用し既存システムと連携したサービスを作る

 PaaSでAI技術を使う方法を紹介したのは、ディビイ 取締役 CTOの今西杉広氏だ。ディビイでは、「dbE Cloud」というビッグデータ解析のためのクラウドサービスを提供している。

 「dbE Cloudは、カードを並べるだけでSQLやプログラミングコードに自動で変換してクエリを作ることができます。また、CSVやExcelのファイルをアップロードするだけで、データを正規化してデータベースに入れてくれる機能もあります」と今西氏。このdbE Cloudで60万行、1500列のテーブルが300ほど、総レコード数360億あまりあるビッグデータ分析の案件があった。


ディビイ 取締役 CTOの今西杉広氏

 「360億レコードを、5から10分以内で検索したい。そこでAzureのSQL Databaseと組み合わせてみましたが、検索するとなかなか結果が返ってこない。AzureのドキュメントDBを使ってJSON形式でも扱ってみましたが、SQL Databaseよりは速かったのですがまだ時間がかかりました。IaaSにしてC#でプログラミングもしてみましたが、それも時間がかかる。思いついたのがApache Sparkの活用でした」(今西氏)

 Sparkを使うと、処理速度はかなり高速になる。とはいえSparkを使うにはHadoopと同様のインフラが必要であり、その構築には手間がかかる。そこで利用したのがAzureに用意されているPaaSのHDInsightだった。「HDInsightであれば、マウスクリックだけでSpark環境が作れます」と今西氏。

 Spark環境がすぐに手に入っても、利用するにはプログラムコードを書かなければならない。そこでdbE CloudとSparkの連携を行うことにした。「今はアルファ版です」と今西氏。当日のデモでは、賃貸物件の賃貸料に、どの物件情報の項目が相関性が高いかを分析してみせた。SQL Server上に用意したデモ用の物件情報は数千件、テーブルのデータに条件を設定してデータを抽出し、結果をSparkで線形回帰分析した。分析結果はPower BIに渡して表示する。

PaaSで提供されるHDInsightを活用することで素早くSpark環境を用意し、PaaSならではの柔軟性を活用して既存のクラウドサービスと連携する。こういった使い方が簡単にできると今西氏。さらにPower BIなども組み合わせることで、すべてをコードから構築しなくても容易にサービス化できるのがPaaSの利点だろうと指摘する。

機械学習ツールキットのCNTKならAzureですぐに利用できる

 ウサギィ 代表取締役 CEO 町裕太氏は、IaaS上でのAI技術活用方法を紹介した。ウサギィは、アルゴリズムや学術システムに強いシステム開発会社。「技術論文などを読み込んで、それをもとに実装したエンジンを持っています。そのエンジンをすでにたくさんの企業が使っています」と町氏。


ウサギィ 代表取締役 CEO 町裕太氏

 町氏は画像認識、ニューラルネット、機械学習についてまず説明した。画像認識は画像に映っている物をコンピュータが特定する技術。その1つに特定物体認識があり、形が同じ物を認識する。これは、たとえば企業ロゴやパッケージ写真などの識別に利用される。もう1つが一般物体認識で「お寿司、机、うさぎといった物を認識させます。個体によって形が違う物を識別します」(町氏)

 一般物体認識の手順は、特徴抽出、機械学習、新しい物体の認識の3ステップ。例えば「手書き文字からその特徴を抽出し、それを学習して新しい手書きの文字を認識できるようになります」(町氏)とのこと。この特徴抽出で有効なのが「ディープラーニング」だ。「ディープラーニングは、脳の仕組みを模倣した機械学習の一種です。これは精度が良く、特徴抽出を自動で行います。とはいえ、万能ではありません」と町氏は説明する。

 一般物体認識では、認識できるようにするには数万枚規模の数多くの画像が必要になる(特定物体認識の場合は学習する画像は少なくていい)。処理時間も、ディープラーニングにはかなりの時間が必要になる。「精度を上げようとすればどんどん学習時間がかかります。学習に利用するコンピュータ性能もたくさん必要になります」(町氏)とのこと。

 町氏は、手書き文字認識を行う様子を紹介した。ここで利用したのが機械学習ツールキットのCNTK(Computational Network Toolkit)だ。このCNTKをAzureで利用するのは極めて簡単だと言う。

 「CNTKを使うには、5行書くだけでできます。最初の2行はLinuxで使う記述なので、Windowsなら3行で済みます。CNTKはAzureのマーケットプレースですでにセットアップされているのですぐに試せるのです」(町氏)。IaaSでAI技術を使うにはもちろんコーディングが必要になるが、CNTKなどを利用すればディープラーニングなどをかなり簡単に利用できるようになると町氏は言う。

 最後に大田氏は「皆さんで達成したい目的、イメージを明らかにし、さまざまなAI技術を使って差別化できる機能を実現して欲しい」と言い、このセッションの参加でAIの活用を実感できたのではと締めくくった。

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