ディー・エヌ・エー 経営企画本部IT戦略部グローバルオペレーショングループ 山本優三氏
「現場の担当者が操作するだけで、入社、退社、異動などに関する全ての処理を自動で実行するシステムをkintoneで作った」--。5月26日に開催されたサイボウズ主催の「kintone hive Vol.3」において、ディー・エヌ・エー(DeNA) 経営企画本部IT戦略部グローバルオペレーショングループの山本優三氏が講演した。
DeNAは2011年から、オンプレミスで運用していたメールやカレンダーのアプリケーションをGoogle Appsにリプレースするなど、ITインフラのクラウドへの移行を開始した。「海外拠点が増え始めたことを受け、グローバルに素早くシステムを展開することを目的に、クラウドの利用を決めた」と山本氏は説明する。
サイボウズがノンプラミングで業務アプリケーションを作成できるサービス「kintone」をリリースしたのも2011年であったため、「当初から注目しており、IT部門で試験的に利用してノウハウを蓄積した」(山本氏)。その結果、2013年にkintoneの採用を決める。
最初にkintoneを使って構築したのはワークフローのアプリケーションだった。世界の拠点ごとにバラバラだったワークフローを、kintoneで作った新たなアプリケーションに統合した。「ワークフローのアプリケーションを皮切りに、事業部向けの業務アプリケーションを多数構築した。現在ではkintoneで構築したアプリケーションが150本程度ある」(山本氏)
DeNAがkintoneを採用した理由は、「海外拠点へスピーディーにシステムを展開できることにくわえ、誰にでも使える分かりやすいUIを提供できることや、多言語に対応できること、外部システムとデータ連携をするためのAPIが豊富にあることなどが決め手になった」と山本氏。
DeNAがkintoneで構築したシステムの1つが、入社・退社・異動といった人材の配置に柔軟に対応するためのシステムだ。「当社には『常に新しい価値を常識にとらわれない形で提供する』という方針があり、そのためには人材の柔軟な配置が求められる。毎月・毎週のように入社する社員がおり、内定が決まってから入社までも短期間であるケースが多い」(山本氏)
情報システム部門としては、「新たに入社する社員にタイムリーに漏れなくアカウントを発行したり、その反対に退職時にはすぐにリソースにアクセスできないようにする、といった対応が必要になる。頻度は非常に高く、グローバルでの対応も必要になる」と山本氏は述べた。
こうした環境に合わせて使い勝手の良いシステムを作るために、「IT部門が関わらなくても、採用担当部門が人事マスタに登録するだけで各システムのアカウントが発行されて新入社員が業務を始められる、という形を目指した」(山本氏)という。
構築したシステムでは、採用担当者や人事担当者がkintoneにアクセスして新入社員の登録を申請すると、社員番号の発行や勤怠給与システムとの連携、アカウント管理システムやActive Directoryとの連携、様々なページへのシングルサインオンの設定などが自動的に行われる。
山本氏はシステム導入の効果について、「入社、退社、異動、雇用形態の変更など、年に5000件程度発生する処理を自動化しているので、多くのコストが削減できている」と説明する。入社申請の承認完了から2時間でアカウントが作成できるようになっており、「PCの在庫があれば、今日採用して明日から働いてもらう、といったことも可能になっている」(山本氏)という。