IDC Japanは6月7日、国内エンタープライズアプリケーション(EA)市場の産業分野別予測を発表した。2015年の国内EAソリューション市場は、3兆3435億6800万円となった。
調査におけるEAソリューション市場とは、IDCが定義するEAパッケージソフトウェアを、企業が実装する際に必要となるソフトウェア、サービス、ハードウェアも含めた国内企業の支出額の合計。予測では、対象市場をERM(Enterprise Resource Management)、SCM(Supply Chain Management)、PLM(Product Lifecycle Management)の3つのセグメント(ソフトウェア/サービス/ハードウェア)からなるソリューション市場として、ユーザー企業の支出額を調査している。
2015年~2020年国内EAソリューション市場予測(2015年は実績値、2016年以降は予測)
2015年分から調査を開始したPLMソリューション市場は、EAソリューションの53.8%を占めており、業績が好調な自動車産業などの需要で、市場規模は1兆7976億1100万円となった。一方、会計などが含まれるERMソリューション市場は2014年の高成長の反動を受け、前年比1.6%増の1兆2756億4900万円と落ち着いている。SCMソリューション市場は、製造業のコスト管理強化の影響で前年比2.3%増となり、市場規模は2703億800万円だった。
同社では2015年の市場成長の背景として、企業のグローバル化とビジネスアナリティクス(BA)市場の成熟に伴う本社での拠点データ分析と活用ニーズ、コスト競争力の強化に向けたIT分野の取り組みを挙げている。この市場に対し特に影響力が大きい製造業は、諸外国のIT化に追随すべく、EA領域システムの垂直統合に向け、国内企業では第3のプラットフォームの活用が拡大している。
今後の市場成長は、少子高齢化による労働力不足を補い、組織力を強化するIT人材の確保と、社外コンサルタントなどによるIT戦略企画がけん引するとみられる。また今後はクラウド需要が顕在化し、ソフトウェアとそのプラットフォームの導入運用に関わるサービスが成長、データ分析など特殊用途を除きハードウェアは縮小を続けるとみている。
IDCでは、PLM、SCM、ERPの3分野を含むEAソリューション市場について、2015年~2020年の年間平均成長率(CAGR:Compound Annual Growth Rate)は2.3%で推移し、2020年には市場規模3兆7412億9500万円に達すると予測している。この市場は製造業の動向が色濃く反映される市場であり、海外投資が進むことで国内市場の縮小傾向も懸念されるものの、堅調な成長になると分析している。
同社ソフトウェア&セキュリテ マーケットアナリストのもたい洋子氏は、以下のようにコメントしている。
「ユーザー企業が目指すEAシステムの垂直統合、その活用を促すデジタルトランスフォーメーション(DX)など高度なIT導入で、企業全体のコラボレーションが経営効果を発揮するには、推進力となるコンサルタントの不足や、専門領域に特化した部分最適の既存システムからの移行など課題が多い。台頭し始めたクラウドサービスの拡大で、徐々に事業規模の縮小が懸念されるITサプライヤーは、サブスクリプション型ビジネスへの移行で体制強化を図り、ユーザー企業のオンプレミス/クラウドシステムのシームレスな統合に向け、サービスレベルの高度化を図ることが重要である」