企業も遅まきながら、生産性の向上や人材の維持・獲得に向けて、“いつでもどこでも”働ける環境の整備と長時間労働削減の2つをテーマにワークスタイル変革に取り組み始めた。
スマートフォンやタブレットなどのモバイル端末やクラウド型ファイル共有システムなどのSMAC(Social、 Mobile、Analytics and Cloud)技術 を用いたITツールなども活用し、育児や介護者などの勤務条件に制約がある従業員でも働ける環境を整備するとともに、無駄な移動や情報共有の時間を削減していくことで効率的な働き方の推進を図っている(図2)。
図2:SMAC技術のインパクト
長時間労働に対する根本的な解決を図るべく、朝活や早帰り、インターバルなどにより総労働時間に枠をはめる試みも行われている。労働時間に制約がある人材にも活躍の機会を提供するとともに、時間あたりの生産性を意識した働き方に意識・行動の両面から移行を促すことを狙っている。
伊藤忠商事などの例をあげるまでもなく、大手有力企業のなかにもワークスタイル変革に早期着手し具体的な成果を上げることに成功した企業も現れはじめた。先進企業の取り組みと成果が明らかになるにつれて、企業もその重要性に気づき、具体的な取り組みに着手しはじめたように見受けられる。
実際にデロイトトーマツコンサルティング(DTC)が実施したワークスタイルサーベイ2015でもワークスタイル変革の必要性を感じている企業は81%に及んでいる。
その一方で、ワークスタイル変革の重要性に気づきながら実施に着手しきれない企業の実情も見えてきた。先述のサーベイでも、ワークスタイル変革を実施した、もしくは実施中と回答した企業は34%に留まり、全回答企業のうち50%が「変革に関心はあるが未実施」と様子見の姿勢に留まる結果となった。危機意識を抱きながら実際の行動に移し切れない企業の姿がそこにはある。