ビジネスIT領域でのシステム構築やデジタルビジネスの創出には、これまでの企業ITの構築や運用と異なる進め方やスキルが求められます。ユーザー企業のIT部門が独力でこれを行うことには困難を伴うことから、ITベンダーと新しい枠組みでの協調関係が必要となるでしょう。
求められる従来と異なるアプローチ
デジタル技術やデジタル化された情報を活用することで、企業がビジネスや業務を変革し、これまで実現できなかった新たな価値を創出するデジタルイノベーションを多くの企業が模索しており、これを実現するためにさまざまな取組みが試みられています。
一方で、ビジネスIT領域でのシステム構築やデジタルビジネスの創出といったイノベーション案件では、早期立ち上げが重要視され、利用の本格化やビジネスの成長に応じて変更や拡張が繰り返されるのが一般的です。
また、技術的にもビジネス面においても未知数な点が多く、トライアンドエラーを繰り返し、永遠のベータ版を本番運用しながらエンハンスし続けることも珍しくありません。すなわち、アイデアと実装を短いサイクルで回し、段階的にイノベーションを実現していく協業のスキームが必要となるわけです。
これには、従来のエンタープライズIT領域のシステム構築や運用と異なるアプローチが求められます。これまでのように、ビジネス要件をしっかりと固め、RFPに落とし込み、ベンダーからの提案を精査し、設計開発を委託するという明確な分業を前提としたプロジェクト運営が通用しないことを意味します(図1)。
(図1)ITベンダーとの協調のあり方(出典: ITR)
デジタルイノベーションを推進するにあたって、現行のIT部門は人員不足とスキル不足に直面することが予想されます。欧米企業と異なり、何百人というIT技術者を社内に抱えている国内企業は非常に少ないためです。
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の調査報告によると、米国ではIT技術者の72%がユーザー企業に所属しているのに対して、日本国内ではユーザー企業に所属するIT技術者は25%に過ぎず、75%はITサービス事業者側に所属しているとのことです(「グローバル化を支えるIT人材確保・育成施策に関する調査」概要報告書 2011年)。すなわち、日本のユーザー企業は、米国と比べて内製化率が著しく低いことを意味します。