de:code

Microsoftの進む道 ~Build 2016/de:code 2016総括~

文:山本雅史 構成:羽野三千世(編集部)

2016-06-20 12:00

 3月末に米国サンフランシスコで開催されたMicrosoftの開発者セミナー「Build 2016」、さらにBuild 2016の内容を受けて5月に東京で開催された「de:code 2016」などから、今後のMicrosoftの進む道を解説していく。

クラウド ファースト

 2014年2月に前任のSteve Ballmer氏からMicrosoftの最高経営責任者(CEO)を引き継いだSatya Nadella氏は、就任当初から「モバイル・ファースト、クラウド・ファースト」をキーワードにしている。この2年間は、Bill Gates氏やBallmer氏などのMicrosoft創業メンバーが作っていた企業カルチャーを変える作業を続けてきた。


de:code 2016の基調講演を行うSatya Nadella氏。講演の内容としては、米国で行われBuild 2016をコンパクトにまとめたモノだった。

 Nadella氏がCEOになって発表された多くの製品やクラウドサービスは、Ballmer氏がCEOだった時代から開発が進んでいた。こういった意味では、Ballmer氏がCEOだった最後の数年間は、Nadella氏への引き継ぎと言った意味が強かったのかもしれない。

 同社は2015年秋、Nokia買収の減損処理とモバイル関連の人員削減を行い、さらに、Nokiaから買収したモバイル部門の製造工場や資産を中国FIH Mobile(Foxconnの子会社)、フィンランドHMD global(Nokiaの元幹部が中心に設立)に売却した。ある意味、Ballmer氏が最後に行ったNokia買収が失敗だったことを認め、2年間という短期間で処理をしたといえる。

 また、Nadella氏は、オープンということにこだわり、.Net FrameworkやASP.NETなどのWindows Framework、Visual Studio Code、買収したばかりのXamarin(iOS、Andorid、Windows Mobileなどのクロスプラットフォームの開発環境)のSDKなどをオープンソース化している。さらに、Microsoft AzureにおけるLinuxの大手ディストリビューションのRedHatとの連携、夏頃にリリースされるWindows 10 Anniversary UpdateへのUbuntuベースのBashシェル搭載、iOS版やAndorid版のMS Officeの提供など、さまざまなオープン化の施策を進めている。さすがに、ここまでのオープンな施策はBallmer氏がCEOであったなら、行われなかっただろう。

 Nadella氏は、Windows 10の1年間の無償アップグレード、Windows 10 Mobile、Windows 10 IoTの無償提供を行っている。このあたりは、クライアントOSなどでビジネスを行うよりも、クラウドのAzureで儲けていくという方針からだろう。実際、PC向けのWindows OSは、PCメーカーへのOEMライセンスが中心で、PCの出荷台数の減少により徐々に低下している。また、Surfaceなどのハードウェアは順調に成長しているが、Nokiaから買収したスマートフォンは大赤字となっていた(こういったことから、Nokiaから買収した事業の売却を行ったのだろう)。

 一方、Nadella氏がMicrosoftのビジネスの中心として考えているクラウドに関しては、Azureが年率120%、Office365などのSaaSに関しても63%の成長を見せている。このように、Microsoftのビジネスは、クライアントOSやOfficeのパッケージソフト中心のビジネスから、クラウドへとシフトし始めている。単に、クラウドといっても、仮想マシンの提供を中心としたAzureだけでなく、AzureをインフラとしたOffice365などのSaaSなど多岐にわたり始めている。

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