HRMOSの特徴の一つがAIを採用した点である。企業ごとに定量評価や定性評価などを分析、どういうスペックの人物が活躍したかや面接に有効だった面接官や、面談回数などを測るという。
どんな人が活躍できるか、会社によって違うが評価シートなどをもとにこうした特性をAIが学んでいく。「例えば経歴や資格など履歴書では見えにくい、その企業で活躍できる人はどんな人か判断する基準を発見できるようなAIを目指す」(取締役 竹内真氏)
中途採用だけでなく新卒採用にも威力か
南氏はHRMOSを「日本の人事制度に合わせたものにする」という点が強みだと説明している。採用した人材のパフォーマンスを一貫して分析、評価する仕組み作りは、中途採用よりも日本の雇用慣行である新卒一括採用にこそ可能性がある。
たびたび報道される上場企業の役員出身校や、採用実績から、新卒採用のKPIは難関大学出身者の採用人数である点がうかがえる。一方、出身校重視の採用活動では、新卒の3割程度は3年以内に転職するというデータもあり、職務やポジションごとに最適な採用をするのが難しい側面がある。現在の新卒採用は職務内容の適正を考慮する優先順位が低く、企業と学生の間にギャップが生じているとも言える。
新規学卒者の卒業後3年以内離職率(厚生労働省)
新卒採用にパフォーマンス評価を取り入れた場合、出身大学という要素がその職務に重要でないと分かれば、より職務内容や適性に合った採用活動ができる可能性がある。
つまり現在は「上位大学をいかに安く採用するのか」が目標化しているが、採用した人材のパフォーマンスを一貫して分析、評価することにより、職務やポジションごとに企業がかけられるコストを最適化するPDCAサイクルを構築できる可能性がある。現在は、採用と評価を一貫して管理できるソフトウェアがないため、タレントマネジメントシステムなど既存の仕組みでは採用情報をひもづけて管理するのは難しい。
一方、こうしたパフォーマンスを測るKPIをどんな項目にするかが問題となる。今回、ビズリーチがセールスフォースと製品開発などを含め提携した意味はこの点にもありそうだ。
セールスフォースは営業活動の要素を分解し、管理するためのノウハウを同社の営業支援システム(SFA)に落とし込んできた。営業という職務で何が重要な要素なのかKPIを設定し、いかに目標を達成するかという点で必要な機能や仕組みを構築したノウハウを持っている。こうした仕組み作りを採用や評価といったHR領域に横展開できる可能性がある。
加えて、その企業で活躍できる人はどんな人か正しく判断するという「AI」も指標を探る一助になるだろう。代表の南氏は、書籍「ワーク・ルールズ」の中でGoogleが「面接の適切な回数」や、入社した人物が活躍したか「面接官ごとの見極めの精度」などをデータ分析、すでに採用活動をデータドリブンにしていると紹介する。HR領域でもデータとテクノロジを利用する「HRTECH」を採用する企業が増えてきている。
HRTECHにより、企業の採用戦略を効率化させるだけでなく、応募者がより相性の良い企業を見つけ、自分の適正に合った職に就けるようになるとすれば、その意義は大きいと言える。