Google Atmosphere Tokyo

クラウドで「柔よく剛を制す」:Google Atmosphere Tokyo 2016基調講演 - (page 3)

阿久津良和

2016-06-15 07:30

ワークスタイル変革の成功には「批評家」が必要


Google チェンジ アンド トランスフォーメーション リード キム・ワイリー氏

 Google チェンジ アンド トランスフォーメーション リード キム・ワイリー氏は、「変化とは時に居心地の悪いものである」というテーマで登壇すると、会場の聴講者を起立させて、腕の組む方向を変えることで、変化に対する違和感を体感させた。企業がワークスタイル改革を起こす上で重要なのは「先導役」だが、変化について行けずに「犠牲者」や「傍観者」も生まれてくる。そこで大事なのが「批評家」だという。彼らはエネルギーと情熱を持つからこそ批評するため、時に変化をうながすサポート役になる可能性があるそうだ。また、移行に至るプロセス時も「否定」には支持を与え、「反抗」には理解をうながし、「受け入れ」段階に入ったらサポートを提供。「探索」段階ではユーザーを激昂し、「コミットメント」「成長」につなげていくのが大事だという。

 ワイリー氏は変化を起こすためのヒントとして、「3つのレベルで人と関わる必要がある」と述べた。まずは「頭」で理解し、感情面の連携を生み出す「心」は人が利己的な存在であることを踏まえる(社員をプロジェクトに関与させることで、自身の責任感が生まれる)。そして新技術の運用方法や共同作業に必要なスキルを回り伝える「足」の3つでモダンワークプレイスが生まれていくと述べた。

 さらにワークスタイル変革を成功に導くポイントとして、次の6つも欠かせないという。「リーダーは必ず模範を持って示す」「プロジェクトに巻き込む」「『なぜ』その変化が起きているのかを伝える」「組織の文化を熟慮し、適切な人材を雇う」「新たな世界で成功するために必要なスキルを提供する」「スターを祝福する」--。特に6番目は「新たな技術を活用しているユーザーがいないと、革新を長期的担保するのは難しい」(ワイリー氏)と説明している。

ダイバーシティがイノベーションを加速させる


グーグル 専務執行役員 CMO アジア太平洋地域 マネージングディレクター 岩村水樹氏

 グーグル 専務執行役員 CMO アジア太平洋地域 マネージングディレクター 岩村水樹氏は、同社の「Google Women Willへの取り組み」について次のように語っている。「日本の働き方は長時間労働を是とし、女性が働きにくい環境になっている。当社は、女性と技術の融合から生まれる可能性を追求してきた」」(岩村氏)。具体的には、パートナー企業と協力して、女性の働き方を変える「未来の働き方コンソーシアム」や、在宅勤務の可能性を試す「未来の働き方トライアル」を通じて、「HappyBackToWork(幸せな職場復帰)」にチャレンジしている。

 日本の女性は結婚・出産後も社会的な役割を持つのが重要と考えているものの、実際は出産を機に職場を離れてしまう。これは職場に働く女性をサポートする文化がないからだと岩村氏は強調。「ダイバーシティ(多様性)がイノベーションを加速させる」とした。


経済産業省 経済産業政策局 経済社会政策室長 藤澤秀昭氏

 そのダイバーシティについては、日本政府も取り組みを行っていると経済産業省 経済産業政策局 経済社会政策室長 藤澤秀昭氏は語る。藤澤氏は、「平成27年度版男女共同参画白書」にある女性の年齢階級別労働力を紹介し、25~44歳の女性の就業率は2012年の67.7%から2015年の71.6%へ上昇し、改善傾向にあると説明。だが、管理職や役員に占める割合を見ると、諸外国は30%前後まで伸びているものの、日本の管理職は10%にとどまり、役員に至ってはたった2%。この現状を踏まえ、「女性の活躍の場が十分といえない。だからこそダイバーシティの推進が政策課題となる」(藤澤氏)と述べた。

 また、経済産業研究所の2009年データを引用し、ワークライフバランスに対して努力しない企業の生産性(1時間あたりの総利益)を「1」とした場合、取り組んでいる企業は「2.277」、育児介護支援に成功している企業は「2.54」であることを示した。藤澤氏は、ダイバーシティを通じて組織と個人に変革を起こす前提として、「女性が大変だからという考え方ではない。誰かではなく自分のため」と捉えるのがダイバーシティの本質と強調した。

Googleの教育分野への意気込み


Google Google for Education 製品担当責任者 ジョナサン・ロッチェル氏

 最後に登壇したGoogle Google for Education 製品担当責任者 ジョナサン・ロッチェル氏は、「イノベーターを創る」と題して生産性の向上と教育の重要性を語った。ロッチェル氏は「Googleスプレッドシート」に長年携わってきた人物だが、次の展開として教育関係者をターゲットにしているという。

 教育機関向けのサービスとして、ロッチェル氏は「Google Classroom」と「Google Expeditions」を紹介した。Google Classroomは、文教向けGoogle Apps「Google Apps for Education」に含まれるサービスの1つで、教師と生徒のコミュニケーション改善や学習の効率的な管理を実現できるとする。また、Google Expeditionsは、生徒たちに参加型の体験を提供するものだ。VR(仮想現実)を通じて珊瑚礁の海や、バッキンガム宮殿などへ生徒たち連れて行くことができる。

 ロッチェル氏は、え生徒たちが革新を生み出すために持つべきスキルについて、「楽観主義」「情熱」「創造性」「好奇心」「失敗」「野心」の6つを掲げた。例えば創造性はコーディングに直結し、同じ目的を持つプログラムでも、そのコードは十人十色になるという。ロッチェル氏は、「スマートなツールを教育者に渡すことで効率的な授業を実現し、子どもたちの可能性を引き出していきたい」と同社の教育への取り組みの決意を述べて降壇した。

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