「Azure上に新規デプロイされるVMの50%がLinux」--OSS戦略担当部長の新井氏

羽野三千世 (編集部)

2016-06-17 07:00


日本マイクロソフト クラウド&エンタープライズ ビジネス本部 OSS戦略担当部長 新井真一郎氏

 日本マイクロソフトは6月16日、MicrosoftのOSSへの取り組みに関する記者説明会を開催。日本マイクロソフト クラウド&エンタープライズ ビジネス本部 OSS戦略担当部長 新井真一郎氏が、Microsoft Azure上でのOSSの利用動向などを説明した。

 Microsoft 最高経営責任者(CEO)のSatya Nadella氏が2014年に“Microsoft Loves Linux”のメッセージを初めて掲げてから2年。「Microsoft Loves Linuxは、当社が外側からOSSへアプローチするという意味だったが、今やMicrosoftはOSSのデベロッパーだ。OSSの中にいる立場になっている」と新井氏は言う。現在、MicrosoftはDockerやApache Cordovaなど2000以上のOSSコミュニティに参加して開発に貢献している。Microsoft Azure上の仮想マシンの25%はLinuxであり、新しくデプロイされる仮想マシンに限るとLinuxの割合は50%だという。また、国内リージョンのLinux比率はグローバル全体よりも高く、ゆうに33%を占める。


Microsoft Azure上の仮想マシンの25%はLinux

 Linuxだけではなく、Azure上ではさまざまなOSSを使うことができる。「特に、クラウドで使うOSSとしては、アジャイル開発やマイクロサービスのニーズが高い」(新井氏)

 同社では、これらのOSSを簡単に利用するための仕組みとして、OSSを導入済みの仮想マシンをAzure上に数クリックで展開できる「Azure Marketplace」を用意している。Azure Marketplaceでは、グローバルで7種類のLinux(Red Hat Enterprise Linux、Oracle Linux、CoreOS、OpenSUSE、SUSE Linux Enterprise Server、CentOS、Ubuntu Server)、日本ではAsianuxを加えた8種類を提供しているほか、800以上のOSSが利用可能になっている。「例えば、ECサイトを構築しようとした際にも数クリックで完成するので、(IT部門以外の)ビジネスユーザーのOSS利用にも適している」と新井氏。


Azure Marketplaceで提供するLinuxの種類

 すでに、多くの企業がAzure上のOSSを活用して自社サービスを構築している。例えば、ECサイト上で顧客のマウス操作などを可視化して購入者と離脱者の行動分析を行うUNCOVER TRUTHの「USERDIVE」は、Azure上のPython DjangoやMySQL、Cloudera HadoopなどのOSSを組み合わせて構築されている。また、トライトゥルーは、地図情報を利用してユーザーの現在位置に応じた情報を検索できる「空間検索エンジンプラットフォーム」を開発するスタートアップだが、そのエンジンはApache CassandraなどのOSSの組み合わせで構成され、Azure上で動作している。

 「誤解してほしくないのは、Microsoftは決してWindowsをLinuxやHadoopに置き換えようとしているわけではないということ。逆に、今現在Linuxで動いているものを、クラウドへ移行する際に無理やりWindowsに置き換えるのは顧客のためにならない。例えば、金融機関などは何千コアという規模でLinuxとHadoopの環境をオンプレミスで動かしているが、これをクラウドへ持っていくときにMicrosoft製品に置き換えようという提案は無理がある」(新井氏)

Microsoft×OSSの開発者メリットとは

 MicrosoftがOSSとの親和性を強めることが開発者にもたらす実質的なメリットとして、新井氏は2例を挙げた。

 1例目は、Microsoftが取り組んでいるC#とApache Sparkの連携プロジェクト「Mobius」。このプロジェクトにより、Windows系開発者にはなじみ深いC#でHadoopが扱えるようになった。同社は今後、Azureで提供するHadoopディストリビューションであるAzure HDInsightにMobiusを組み込んで、フルマネージドサービスとして提供する予定だ。


C#とApache Sparkの連携プロジェクト「Mobius」によりC#でHadoopが扱えるようになった

 2例目は、“Ubuntu on Windows”の実現だ。Windows 10の次期メジャーバージョンアップで実装される予定のWindowsサブシステムでは、Ubuntuのユーザーモードアプリケーションがそのまま動作するようになる。Linux系のOSS開発者が、Windowsクライアントの領域でも活躍できるようになるわけだ。

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