Pacific CrestのアナリストEvan Wilson氏は、調査ノートで次のように述べている。
LinkedInは独自のデータセットを所有している。同社はユーザーの職場や、肩書き、仕事上関わっている人とのつながりの多くに関する情報を持っている可能性が高い。これは従来のCRMは欠けていたデータセットだ。従来のCRMでは、ユーザーは、空のデータベースに常に情報を入力し続ける必要があった。もし適切に統合されれば、このデータセットはMicrosoftにとって重要な資産となる。

しかし、エンタープライズソフトウェアの観点を忘れるわけにはいかない。Microsoftは、LinkedInがLynda.comの買収後にやろうとしていた事業の実現を支援することができる。Lynda.comは動画を使ったオンライントレーニング授業を提供する事業だ。LinkedInがLyndaを買収した際、同社のCEOであり、買収後も引き続きLinkedInの経営を担う予定であるJeff Weiner氏は、人々がプロフェッショナルとしてどのように働き、人と関わっているかを示すエコノミックグラフを完成させることについて話していた。しかし、LinkedInは事業を多角化を進めることができず、市場の失望を招いていたとWilson氏は述べている。「LinkedInが事業を大幅に多角化する能力に対する金融市場からの信頼を失っていた。Microsoftとのパートナーシップは、新たな期待を与えてくれるものだ」と同氏は書いている。
Weiner氏はブログ記事で、LinkedInはGoogleなどの大企業と競争できる資源と能力を獲得するだろうと述べている。同氏はまた、MicrosoftとLinkedInは、異なる領域から同じ目標を目指していると付け加えた。
Weiner氏が示した合併後に考えられる事業例でも、エンタープライズHRが挙げられている。LinkedInはエンタープライズソフトウェアにも関心を持っていたが、その領域に踏み込むための知識を持っていなかった。そしてMicrosoftに加わった。Weiner氏は、買収後のMicrosoftとLinkedInの共通のゴールとして、次の3つを挙げている。
Lynda.comとLinkedInの学習ソリューションを、Officeやその他いくつかの、世界でもっとも人気が高い生産性アプリとを緊密に統合することにより、学習と人材開発のあり方を変えるというわれわれの目標を加速すること(Lynda.comでもっとも人気のあるトップ25のクラスのうち、6つがMicrosoft製品に関連するものだ)。
Microsoftとパートナーシップを組み、企業内のもっとも破壊的な改革の機が熟したソリューション(企業ディレクトリ、企業ニュース提供、コラボレーション、生産性ツール、ビジネスインテリジェンスおよび従業員の意見の流通など)でイノベーションを起こすことにより、LinkedInが持つ、世界の仕組みを真に変える潜在能力を実現すること。
採用活動や学習および人材開発以外にも枠組みを拡大し、従業員の採用、管理、士気向上、指導などに関わる、組織内のあらゆる部門に価値を提供すること。この人的資源の分野には大きなビジネスチャンスがあり、Microsoftにとってはまったく新しい事業分野となる。
簡単に言えば、MicrosoftとLinkedInは、人事ソフトウェアなしでは、この新たに到達可能なトータル市場にアクセスすることはできないということだ。

Microsoftは人事に特化したアプリケーションを持っていないかもしれないが、LinkedInを買収したことにより、今後多くの接点を持つことになる。もしかすると、人材管理アプリができることの多くはOfficeでも可能かもしれない。MicrosoftがHCMソフトウェアをリリースのもそう遠くはないだろうと筆者は予想している。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。