国連や各国政府は、CO2排出量を削減するために新たな目標を設定しているが、そのことで、今でも世界の多くの地域では、電力供給を石炭火力発電に頼っているという事実が変わることはない。もちろん、石炭火力発電所を所有する企業が、これまで投資してきた発電所を簡単に諦めたりはしない。
GEは今週、ある技術を発表した。この技術は、データサイエンスやソフトウェア、インテリジェントオートメーションなどを利用することで、あらゆる石炭火力発電所を最適化できるというものだ。この「Digital Power Plant for Steam」(DPP for Steam)は、設備に依存しないテクノロジであり、仮に世界中の既存の石炭火力発電所に導入されれば、5億トン(MT)相当の温室効果ガス排出抑制効果が発揮できるという。これは、自動車1億2000万台分の温室効果ガス排出量に相当する。
この取り組みは、公益事業にモノのインターネット(IoT)、クラウド、アナリティクスを導入するという、GEが2015年に掲げた大きなミッションの一環だ。
この新技術は、NeuCoが開発したコードとニューラルネットワークをベースにしている。NeuCoは、ボストンに本社を置く機械学習とデータアナリティクスのスタートアップで、GEが2016年4月に買収した。DPP for Steamのソフトウェアは、発電所に設置した1万個以上のセンサから得られたデータを分析することで、効率を最大2%改善できる。NeuCoのニューラルネットワークは、発電所のボイラーの効率を向上させる一方で、石炭の品質を分析して燃料の使用量を削減することができる。このシステムは、発電所全体をクラウド上に複製し、性能を改善できる領域を特定する。
GE Powerの最高デジタル責任者(CDO)を務めるGanesh Bell氏は、「世界の多くの地域では、電力供給の大半を依然として石炭火力発電に頼っており、石炭火力発電はなくならない」と述べている。「当社の顧客は、石炭火力発電所に多くの資金を投じており、今後数十年間は稼働させる予定だ。しかし、COP21後の世界では、規制に対応できず、発電所を稼働させ続けることはできなくなる可能性がある。この製品は、それらの顧客に、ソフトウェアによって運転状況を再活性化することで、資産を稼働させ続けるための選択肢を増やすものだ」(Bell氏)
Bell氏によれば、大局的に見れば、DDP for Steamのシステムは公益事業者が石炭火力、原子力、風力などの複数の電源を組み合わせて、発電の最適化を進めるのを助けるものだという。DDP for Steamのシステムは、「Digital Wind Farm」などのほかの発電最適化ソリューションと同じく、GEのクラウドプラットフォームである「Predix」上に構築されている。Bell氏は、Predixを使うことで「単一の安全なクラウド上で、エンタープライズ規模ですべての発電状況と全データを一覧できる」と述べている。
同氏は2016年に入り、米ZDNetに対して、現在のエネルギー市場におけるIoT利用はまだ初期の段階だと話していた。
「当社の顧客が生み出す価値が持つ市場機会は大きい。しかし、当社がこの課題に取り組んでいるのは、市場が大きいからではない。顧客がより高い業績を上げるために、当社に対してハードウェアとソフトウェアを提供するよう求めてきたからだ」(Bell氏)
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。