経済産業省から「サイバーセキュリティ経営ガイドライン」が発行されたこともあり、企業に情報セキュリティ最高責任者(Chief Security Officer:CISO)の設置が求められるようになったと感じます。セキュリティ分野での人材育成の話題とあいまって、CISOの知識やスキルについて語られていますが、なかなかこれといったものが出てきません。
いくら有識者が話し合ったとしても、その回答を出すのは難しいでしょう。CISOとは知識やスキルで語れる役割ではないからです。
どのような知識やスキルを持っているかを検討する前に、そもそもCISOとはどのような役割と責任を持ち、何をするべきか。CISOになる資格の有無ではなく、そこに何が求められているのかを明確にする必要がありそうです。
CISOに求められていること
CISOは名前の通り、情報セキュリティの責任者であり、経営陣です。日常において、情報セキュリティ対策の状態を把握するために情報を収集し、その確保や維持における予算を明確にしつつ、経営会議などで提案をします。決して、情報セキュリティ事故の時にだけ出てきて謝罪をする役割ではありません。
CISOには情報セキュリティの現場からは必要なリソースを獲得するための力量が求められ、経営からは情報セキュリティを効果的に担うための提案が求められます。こう書くと板挟みの辛い立場のように思われるかもしれません。これは評価の軸が明確ではないからです。
では、CISOは何によって評価されるのでしょうか。実際のところ、これは情報セキュリティ担当者全員に関係する課題かもしれません。人材育成の話をする際に忘れてしまいがちなのが評価の視点です。評価できる仕事でなくてはモチベーションを維持できません。情報セキュリティ人材が育たないと言われているのは、ここにも問題がありそうです。
マイクロソフトのセキュリティガイドブック
経産省とIPAが発行した「サイバーセキュリティ経営ガイドライン」には、情報セキュリティの現場から経営層に対する要望がたくさん込められていますが、経営層からCISOに求めるものは書かれていませんでした。これは経営層の中にCISOが含まれており、そこは自分で考えてほしいというメッセージだったのかもしれません。
しかしながら実際のところは、CISOは板挟みの孤独な立場になることが多いようです。CISOは経営層の中でどのような立場で自らの存在意義を示したらいいのでしょうか。