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「1億倍速いコンピュータ」に利用--量子アニーリング理論の可能性(1) - (page 2)

吉澤亨史 山田竜司 (編集部)

2016-08-25 06:30

--量子アニーリングが非常に注目されていますが、その理由は。

大関氏 やはり、世の中で最適化が求められているからではないかと思っています。機械学習でもなんでも、すべてのアルゴリズムの背景にあるのは最適化問題です。流通であれば、目的地までの経路を最適化する、積載する荷物を最適化する。限られた予算内で効率化する。これらの目的を数式に定式化することが、最適化問題の第一歩です。

 そしてその数式を解くために、これまでそれぞれの問題に特化したアルゴリズムを用いてきたのですが、それに置き換わるものとして量子アニーリングが注目されています。その理由は汎用性が高いことです。いろいろな最適化問題に適用できる、融通の利きやすさが一番の理由だと思います。

田中氏 まさにその通りだと思います。今はIoTや、FinTechもそうですが、情報をどう操るかということがすごく注目を集めています。私は最近、講演などの際に「IoT社会とは、あらゆるものがインターネットにつながり、情報処理をする社会。その情報処理には多数の組み合わせ最適化問題が潜んでいます」と言っています。そういう社会では、より汎用的に組み合わせ最適化問題の処理をすることが求められます。

 今までは、例えば流通で目的地までの最短経路を知りたいときは、そのためのアルゴリズムを開発していました。それは専用のアルゴリズムなので計算は速い。でも、積載する荷物を最適化したい場合は、そのアルゴリズムは使えません。これまでは名前のつくような最適化問題は少なかったので、その都度アルゴリズムを開発すれば済みました。

 それがIoT社会になると、最適化しなければならない問題が縦横無尽に、階層的に、あらゆるところに出てきます。そうなると、その都度アルゴリズムを開発するよりも、どのような問題でも最適化できる汎用的な方法を構築した方が戦略的にも有効です。量子アニーリングはそれが可能なので、注目されていると私は考えます。

大関氏 要するにパズルですよね。流通なら、荷物をどのように積み込んでいけばたくさん積めるか。でも、それはあくまで荷物の積み方だけで、積んだ場合の総重量はどのくらいになるか、商品価値の合計はいくらになるかは、試してみないとわかりません。それを一つひとつ試していたら、非常に時間がかかる。それが組み合わせ最適化問題の難しさです。

 またIoTにおいては、センサが随時発信する膨大な計測データを収集していますが、人間が何らかのタスクを課す際には、センサが反応して現在の状況を伝えるとともに、その状況に応じた最適な解をすぐに求める必要があります。解を瞬時に出すためには処理速度と条件設定が必要になりますが、量子アニーリングは条件設定が非常に簡単にできる汎用性が強みです。

田中氏 量子アニーリングや類似の計算方法を採用するマシンとして、センサに直接そのようなマシンがくっついた「エッジ型」や、インターネットを介して、センサから得られた情報を遠隔地サーバに飛ばしそれを処理する「クラウド型」のものが次々に開発されると考えます。D-Waveの事例により同じような計算方法を使えるマシンをさまざまな人が作るようになる可能性を秘めています。


京都大学大学院情報学研究科システム科学専攻助教、大関真之氏(右) 早稲田大学高等研究所助教 田中宗氏(左)

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