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Googleやリクルートが取り組む理由--量子アニーリング理論の可能性(3) - (page 2)

吉澤亨史 山田竜司 (編集部)

2016-09-09 07:00

大関氏 量子アニーリングの変わった利用の仕方として、Googleが発表した車載カメラの事例では、良い解を高速に出すという側面を利用し、何度も何度もアニーリングをして良い解をサンプリングするという方法を駆使し、機械学習に利用しています。車載カメラが他の車を認識する率が8割から9割に向上するという結果も出ています。そういう意味では着々と試行錯誤を重ねて、確実に一定以上の効果が得られるとなったときに、「それでは全部計算手法を置き換えよう」となるのではと思います。

 お金の計算は研究者が一番苦手ですが、金融の問題に対して、量子アニーリングを利用した最適化という観点は興味を持たれているようです。どこに投資をしたらゲインがあるか、同時にリスクを減らせるかポートフォリオの問題です。その両者の競合を考えながら、最適な投資戦略を構築するわけですから、やはりパズル。組み合わせ最適化問題です。機械学習や最適化問題のさまざまな利用例を今積み上げていっている段階で、それぞれ興味を持ったユーザーが先鋭化していっているわけです。

 そういった機械学習にしろ最適化問題にしろ、実際にD-Waveをハードウェアとして実験する立場と、田中さんがやっているように、デジタルコンピュータでアルゴリズムの中に量子アニーリング的な要素を入れるという2つの方向性があると思います。ハードウェアは十数億円するので、導入は難しいと思います。


D-waveマシンで組み合わせ最適化問題を解く様子。ウェブブラウザ上の操作により、カナダにあるD-wave Systemsが持つ量子アニーリングマシンに解きたい最適化問題を送信すると、瞬時に回答が返ってくる(動画)(大関真之氏提供)

 それでもうまくD-Wave Systemsは宣伝して、クラウドサービスも展開しているようですが、加速度的な広がりはなかなか難しい。一方でソフトウェアやアルゴリズムの改善というアプローチはコストがそこまでかからないので爆発的な広がりを持つかもしれません。

田中氏 確かに1998年に理論が提唱されて、2011年に商用マシン、D-Waveが登場しました。「D-Wave 2X」量子コンピュータは「1億倍以上高速」という話は、研究者の立場から申し上げると、結果が出せる条件が限られていて(実用には)もう少しお待ちくださいという状況です。

 現段階で、産業界の実問題について、量子アニーリングが既存の方法に勝つとすれば、競争相手をうまく設定した上でソフトウェアになると思います。なぜならD-Waveでも1000ビット程度しかありません。これは、典型的な組み合わせ最適化問題である巡回セールスマン問題でいえば、わずか10箇所程度の最適配送ルート探索の問題であり、産業界の実問題において、即、利用可能な問題ではないことは容易に想像ができます。

 ただ、確実にビット数の集積度は上がっています。2年で倍。さらに、量子アニーリングや類似の計算方法を実装した別のマシンが次々現れることによる競争により、産業界の実問題を取り扱うことのできるマシンができると考えています。大関さんが言われたように、そのときまでに何を考えてきたかが大きく生きてくると思います。

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