モバイルデバイスが増える中、企業がその管理の重要性を強調するようになってしばらくの時間が過ぎた。解決策としてのソフトウェアも日々進化しており、今後も良い意味での製品開発競争が続くと考えられる。
この領域で、1つ差別化に成功した機能を持つ企業に米Absoluteがある。同社は、1993年にカナダのトロントで創業し、バンクーバーと米テキサス州オースチンにそれぞれ本社を持つ。2009年10月に日本市場に進出しているが、今回さらに日本での事業を本格化していくという。
Absoluteが展開するモバイルデバイス管理対策ソフトウェア「Data & Device Security」(DDS)は、PC、スマートフォン、タブレット端末などの資産管理をSaaSで提供するもの。他製品と同様に、端末ごとに、CPUやメモリサイズといった機器構成といったハードウェア資産、アプリケーションやOS更新情報などソフトウェア資産の情報を把握できる。
企業は、資産管理、位置情報の把握による盗難や紛失時の遠隔ロックやデータ消去、PCの発見や回収といった施策を打てる。
ここで、DDSの他社との差別化要素となっているのが「エージェント自動復活機能」だ。AbsoluteはDell、HP、富士通、Acer、東芝、Lenovoなど世界の主要端末メーカーやMicrosoftなどのソフトウェア企業とも協業しており、各メーカーの多くの端末のBIOSにDDSを組み込んでいるという。
これにより、もし端末が盗難に遭い、OSが再インストールされたり、HDDを初期化されたとしても、犯罪者などが新環境を立ち上げた際に、BIOS経由でAbsoluteのサーバに通知が行き、それを検知して同社がエージェントを端末にインストールする。
カナダ人の藤川氏は、米国市場を拡大させた実績があり、期待の日本市場を任された
4月に日本法人のカントリーマネージャーに就任した藤川紳太郎氏はこれについて「今まで誰も実現できなかった機能」とアピールする。
実際に、UCLAの学生が米国でPCを盗まれた際、転売目的で窃盗団が当該PCをインターネットで販売したことがあったという。大阪府の男性がこのPCを購入。ここで、端末回収チームは、エージェント自動復活機能をベースに使用者を特定した。その後、使用者から連絡があり、事情を説明した上で返却してもらい、もともとの持ち主にPCを送ったというケースがあったという。
回収は警察と連携しながら実施しており、「盗難に遭ったPCの4台に3台が戻ってきている」と同社は説明している。
今回さらに、広く使用されているシステム管理ソフトウェアである「Microsoft System Center Configuration Manager」(SCCM)の健全性を維持するための機能を、DDSに新たに追加した。DDSにSCCMステータスレポートを追加するというもの。
従来、端末側でSCCMエージェントが破損することがよくあり、その際にSCCMシステムの管理担当者が対応することになるものの、重要パッチの適用なども含む危険な作業という。端末が社内ネットワークから離れることも多く、端末の確認すらできないという状況を招くことのリスクは大きい。SCCMエージェントの破損などが原因で、認識できなくなっている端末数が全体の2割に達している企業もある。
新機能では、DDSのエージェントが、管理対象となるWindowsデバイス上でスクリプトを実行することで、SCCMクライアントのステータスを検出する。この「ヘルスチェックテスト」により、SCCMクライアントが存在し、正しく機能していることを判断する。
日本では、飲料販売のカクヤスが管理職向けにPCの盗難、紛失、情報漏えい対策のために導入。保険や医療、インターネット、区役所などでも数千から1万ライセンスという規模で導入する事例が出てきている。藤川氏は「日本市場への本社からの期待は非常に大きい」とし、今後人の採用を含めて日本法人を拡大する予定と話している。