本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、シマンテックの日隈寛和 代表取締役社長と、日本マイクロソフトの樋口泰行 代表執行役会長の発言を紹介する。
「サイバーセキュリティは従来のITの境界線を越えていく」 (シマンテック 日隈寛和 代表取締役社長)

シマンテックの日隈寛和 代表取締役社長
シマンテックが先ごろ、企業向け事業戦略について記者説明会を開いた。日隈氏の冒頭の発言はその会見で、今後のサイバーセキュリティのありようについて語ったものである。
サイバーセキュリティが従来のITの境界線を越えていくとは、どういうことか。日隈氏はまずその背景として、サイバーセキュリティ脅威の状況について次のように説明した。
「2015年には世界中で4億3000万個の新しいマルウェアが生まれた。1日あたり118万個になる計算だ。また、個人情報漏えいの被害件数は年間で5億件。世界のインターネット人口の15%以上が被害に遭ったことになる。今後さらにIoT(Internet of Things)の世界が広がっていくと、これらの数字は計り知れないものになる」
そうした中で、「サイバーセキュリティはこれまでITの範ちゅうで語られてきたが、これからは企業や個人、製品やサービスにとどまらず、インターネットにつながる全てのものが対象になってくる。しかもあらゆる産業に影響を与えるものになる。これはまさしく従来のITの境界線を大きく越えていく動きだ」というのが日隈氏の見解だ。

サイバーセキュリティ脅威の被害状況
会見内容については関連記事を参照いただくとして、ここでは日隈氏が語ったサイバーセキュリティのありように関連して、筆者がかねて疑問に感じていたことを会見の質疑応答で聞いてみたので、そのやりとりを記しておきたい。筆者の疑問は、「IoT時代になると、サイバーセキュリティ機能はクラウドプラットフォームに組み込まれていき、シマンテックのようなセキュリティ専業ベンダーの役割は変わるのではないか」というものだ。