コンテナ技術でアプリ開発に旋風を巻き起こしている米Dockerだが、成功した秘密は技術そのものではなく「使いやすくしたこと」――Dockerの最高経営責任者(CEO)、Ben Golub氏が6月7日、米Hewlett Packard Enterpriseが米ラスベガスで開催した年次カンファレンス「HPE Discover 2016」で語った。HPEと戦略的提携も発表、HPEのサーバにDocker Engineを組み込むほか、Dockerの法人向けサービスを共同で提供する。
HPEのCEO、Meg Whitman氏に招かれて基調講演のステージに上がったGolub氏、「Docker技術が離陸した理由は?」とWhitman氏に聞かれて、次のように語った。
Dockerの最高経営責任者(CEO)、Ben Golub氏
「(コンテナ)技術そのものは新しい技術ではない。3年ほど前からあるが、とても不可解で使うのが難しかった。オペレーション中心で、これが採用を阻害していた。Dockerはここに対応した」とGolub氏。
開発者が技術にアクセスしやすくするため、まずはアプリケーション開発で利用するプラットフォームと同じプラットフォームを、アプリケーションを実装する人も利用できるようにした。次に実施したのは、インターフェースの標準化だ。これにより、アプリケーションを一度開発して「Docker化」すれば、物理、仮想、クラウド、オンプレミス、さらには別のデータセンターなどで動かせるようになった、とGolub氏は説明する。「もっとも重要なことは、広く活気のあるエコシステムを奨励したこと」とDockerの採用が増えた秘密を分析した。
もちろん、Dockerが開発者や企業が抱えていた問題を解決しているという点は大きい。それが「Goldman Sachsのような大企業から2人で始めたばかりのスタートアップまで」(Golub氏)という幅広い採用につながっているようだ。米国防省(DOD)もDockerのユーザーだ。このように多彩な企業に対し、Dockerは一般的に2つのメリットをもたらしているとGolub氏は言う。――開発時間の短縮とコスト削減だ。
「アプリケーションを開発してどこでも動かすことができる。平均するとアプリケーションの変更は13倍高速になるし、エラーの数は3分の1に削減される。さらにはエラー修正に要する時間はわずか5分の1だ」とGolub氏。このように時間が短くなることは、効率と敏捷さにつながる。
これに、オペレーション面での長所となるコスト削減が加わる。「コンテナは軽量で、同一のインフラで同じアプリケーションを動かす場合、リソースの使用率は20分の1で済む」とGolub氏。この後、インフラのコンソリデーションを行うと、コストメリットは実に大きなものになると続ける。
Golub氏はよくあるユースケースとして、レガシーアプリケーションのDocker化を挙げた。これにより、アプリに変更を加えることなく、あるデータセンターから別のデータセンターに動かしたり、直接クラウドに動かしているという。HPEのWhitman氏は、HPEもHP UXをDocker化したと付け加えた。
このほかにもメリットはないかと探るWhitman氏、「Dockerを実装したら、若いタレント(開発者)の獲得につながる?」と興味深い質問をした。
これに対してGolub氏は笑いながら、「もちろん!」と回答。実際、「Dockerを実装している企業はクールに見える」と、Docker採用の理由として多いとのことだ。「だが、Dockerの技術がエキサイティングなのは、若い開発者だけではない。開発者はだれも素晴らしいコードを書きたいと思っており、それがどのように実装されるのかに時間を費やしたくはない。環境に一貫性がないために生じる問題に時間を費やしたくはないと思っている。Dockerはこれを解決できる」と続けた。