cloudMatrixはクラウドブローカーであるとはいえ、そう言い切ってしまうと少し誤解を生む可能性がある。cloudMatrixでは、使用する仮想マシンの数に基づいたサブスクリプションベースのコストが提示される。IBMが実際に目標としているのは、その場でコストを把握できるような算定エンジンを搭載した、一目でITインフラの全体像を見渡せるダッシュボードなのだ。cloudMatrixは、AWSとMicrosoft Azure、SoftLayerといったクラウドをサポートするとともに、VMwareの「vCloud Director」と「vRealize」もサポートしている。また、近々「OpenStack」とGoogle Cloud Platformも追加される予定だ。
ひとことで言えば、IBMが作り上げようとしているITサービス管理システムによって、顧客は自らでクラウドサービスを用意できるようにもなる。ブローカーとしてのこの能力は、RightScaleのような他のIT企業が持つ同種のシステムや、米国時間6月22日にCA Technologiesから発表されたクラウド監視パッケージとcloudMatrixを差別化するものだと言えるかもしれない。
しかし、GravitantのcloudMatrix(同社の共同創業者であるManish Modh氏が生みの親だ)で筆者の目を引いたのは、アプリケーションの構築前にコストを見積もるという能力だった。また、アプリがクラウドフレンドリーなものになるかどうかを見極めるための一連の質問も用意されている。
例えば、インフラ構成対象の明細をダウンロードする機能があらかじめ用意されているため、企業のIT幹部によるクラウド関連の提案が支援できる。コスト関連のコンテンツは、実際の管理ツールと同じくらい注目に値する。クラウドサービスでの支払い履歴や、課金状況、払い戻しの追跡機能は欠かせないものと言える。cloudMatrixには、価格データや、競合他社の製品に対するIBMの再販レートがあらかじめ集積されており、特定企業向けのカスタマイズされた契約も取り扱えるようになっている。
cloudMatrixは、以下の3つの領域に力を入れている。
- アプリの移行や構築、モダナイゼーションといったタスクの作成や使用。
- サービスとしてのブローカーおよび運用、ITの実現。ここではコスト分析やクラウドのサプライチェーンという選択肢も登場する。
- クラウドの利用や最適化、配備のリコメンデーションといった概略の最適化と展開。