#6:長期的に見て考えられるシナリオ
英国のクラウド業界は発展する。英国から北アイルランドとスコットランドが独立しないと仮定した場合、データセンターはMicrosoftやAWSが建設中のものや、IBMやGoogleが現在稼働させているもの以外にも増えていくだろう。もっとも、英国のプライバシーモデルがどのようになるのかは不透明だが、英国の場合にはより企業寄りで、よりテクノロジ寄りになるという主張はできるはずだ。
Forrester ResearchのアナリストであるLaura Koetzle氏は、米TechRepublicに対して以下のように語っている。
ブレグジットがデータのプライバシーと、データのレジデンシーに及ぼす影響は絶大だ。英国がEUから離脱した時、(a)カナダやスイスのような信頼できる国体になるか、(b)EUの一般データ保護規則(GDPR)による要求を満たす、新たなプライバシー法案が施行されることになるだろう。英国がこれら以外の道を選んだ場合、英国内で操業する企業はデータをEUのデータセンターに移行する必要に迫られるはずだ。さらにEU諸国の企業はクラウドベンダーに対して、EUのGDPRに準拠するために、データを英国からEUのデータセンターに移行するよう求めるようになるだろう。
クラウドサービスアプリケーションの提供に特化した企業であるBitTitanによると、英国は一時的に打撃を被るものの、長期的に見るとプラスになる可能性を秘めているという。同社の最高経営責任者(CEO)Geeman Yip氏は以下のように述べている。
英国のEU離脱に伴い、顧客はEUのデータ主権規則だけでなく、英国のデータ主権規則にも準拠する必要に迫られる。英国の為政者らは、自国の経済的安定を維持するうえで、大規模なインフラプロバイダーを国内に留めておくとともに、より多くの企業を呼び込む必要がある点を理解している。英国がテクノロジ上のイノベーションの発信地(企業が実験やイノベーション、想像力を駆使する場)になるとともに、EUの規則に縛られることなく創意工夫を凝らせる中心地になる可能性は十分にある。
ただ、データのプライバシーや規則に関する交渉が長引くという落とし穴も考えられる。英国は、EUからの離脱プロセスを開始する必要があり、その交渉は2年を要する可能性もある。2年という期間は、クラウドの成長にとってあまりにも長いのだ。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。