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日本株展望

英EU離脱のソフトランディング・シナリオ - (page 3)

ZDNet Japan Staff

2016-06-30 12:20

(4)EUの意思決定に参加する権利、新規加盟国に対する拒否権が鍵

 離脱する英国に、EUの意思決定に参画する権利がなくなるのは当然だ。ただし、EUへの負担金が残り、離脱の実効が骨抜きになる場合は、英国としては、EUの意思決定に参画する権利も一定範囲で確保するよう主張せざるを得ない。

 特に重要なのは、EUへの新規加盟国に対する拒否権だ。EU内にトルコやウクライナをEUに加盟させようとする動きがあることが英国内で重大な懸念を生じている。EU内には、ロシアへの対抗上、ウクライナとトルコをEUに取り込むことを重要とする議論がある。ただし、英国内のEU離脱派は、これを重大な脅威ととらえている。

 財政状態の悪いウクライナをEUに加入させれば、ギリシャと同様の支援を行う必要が生じる。そうなると、将来、英国の負担も増す可能性がある。トルコをEUに加盟させると、トルコ在住の大量のイスラム教徒が自由に英国に入国してくる可能性がある。トルコからの移民や出稼ぎが増えることに英国内の離脱派は不安を感じている。

 英国内のEU残留派は、EUに残留する限り、トルコの新規加盟を阻止する拒否権が英国にあると主張してきた。ところが、EUを離脱すると、その権利はなくなる。EU離脱後も、EUへの負担金を含めEUと密接な経済関係を維持する場合、EUの意思決定に一定の拒否権を確保することは、EUとの交渉での重要なポイントとなる。

 EUサイドとしては、EUを離脱する英国にEU内の意思決定に拒否権を持たせるのは言語道断となる。交渉は長期化が予想される。

(5)EU内のパスポート制度の適用

 ロンドンで営業認可を取得した金融機関は、現在、EU域内で自由に支店開設など営業活動が行える。EU内のパスポート制度の恩恵を受けるからだ。ところが、英国がEUを離脱すると、その恩恵がなくなる。そうなると、ロンドンを拠点とする金融機関は競争力を失い、ロンドンの国際金融都市としての競争力は低下する。ロンドン拠点の金融機関は、フランクフルト(独)やダブリン(アイルランド)に拠点を移す動きが出るかもしれない。

 この問題は簡単に解決できない。「英国はEUを離脱するが、ロンドンだけ特別区としてEU域内と同等の地位を維持する」という交渉が進めばいいが、そんな虫のいい話をEUがのむとは思えない。

離脱交渉が10年を超えるという極論にも現実味

 難問が多すぎて、EUとの離脱交渉が2年でまとまるメドはない。ただし、2年の交渉期限が切れてそのままハードランディングとなることは、英国もEUも避けようとするだろう。

 そうなると、だらだらと5年10年にわたり、離脱交渉が続くという可能性もないとは言えなくなる。その内に英国でもう一度、国民投票を実施しようとの機運が高まるかもしれない。

 英国のEU離脱可決で、世界の金融市場は一時的にハードランディングを織り込みにいった。これからは、ハードランディングとソフトランディングのどちらに向かっていくかを見ながら、世界の金融市場は動いていくことになるだろう。結論が出るのに最低で2年、場合によってはさらに長い年月がかかりそうだ。

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