エンジニアに「なぜこれを作るか」議論の機会をつくる
ビズリーチは、内製化で複数のサービスを立ち上げてきましたが、私が組織作りで常に意識してきたことをお伝えします。一番意識しているのは、エンジニアに対して「なぜこれを作るのか」を理解してもらう機会をつくることです。多くの開発現場では、なぜ作るのかという説明がないまま、システムを開発をしなければならないケースが多くあります。自分の手でサービスを作り出せる環境を望むエンジニアは、本来、サービスがどれだけ利益を生み、事業に貢献しているかを身近に感じられる機会を求めています。
作る理由を説明するだけでなく、「作らない(開発を中止する)」という結論に達したとしても、なぜその判断に至ったかも伝えるようにしています。
新たなサービスや事業を作り始める際も、経営層や管理者だけで完結させるのではなく、必ずエンジニアなどプロダクトサイドの人に同席してもらいます。「収益を上げるために、どのようなことが必要か」という議論やビジネスに触れる体験を作ってあげるのです。
本来、エンジニアはロジカルに物事を考えるのが得意です。しかし、「サービスでどうお金を儲けるか」という問いを前にすると、思考が固まってしまう方も多いように感じます。これは、単純に「どうすればユーザーが価値を感じてお金を支払うか」を考える機会がなかっただけだと考えています。お金を払いたくなる動機の形成やビジネスの仕組みまでエンジニアが理解し、発言する場を設けることで、サービスはより確実に成長し、エンジニアにとっても魅力的な環境となると考えています。
ビズリーチが取り組む「プロダクト会議」
ビズリーチでは、各事業で週一回の「プロダクト会議」を行っています。このプロダクト会議では、事業の最高責任者とプロダクトの責任者に加えて、各プロジェクトをリードするデザイナーやエンジニアが数人同席し、解決すべき議題について話し合います。この会議では、事業責任者は何を達成したいか(WHAT)を話し、プロダクト側のメンバーはどのようにすればプロダクトで実現できるか(HOW)の視点から議論します。お互いが満足するポイントを見い出し、プロダクトが事業に貢献できる最善策を探すのです。
この会議のプロセス自体が「ビジネスの課題をいかにプロダクトで解決するか」という、フレームワークそのものを学ぶ機会になります。この会議を通して、自然とビジネスに影響をおよぼすプロダクトとは何かを考える力が身につくのです。
もちろん、すべての会議にものづくりの人間を同席させることは困難かもしれません。その場合は、きちんとマネージャーやリーダーが「何をやるか」だけでなく「なぜやるか」というストーリーを伝えることを徹底してきました。
サービス開発の過程は、山登りの感覚に近いと考えています。ゴールという名の頂上が麓から見えていないのであれば登る気は失せますし、そもそも「なぜこの山を登るのか」という目的が共有されていなければモチベーションは上がりません。ですが、きちんと先導役が「この道は蛇行しているけれども、その理由は……」と適宜説明してくれれば、不満は溜まりにくくなるのではないでしょか。