ファイアウォール運用負荷を軽減--ソフトバンク、社内LANのアクセス制御に新発想 - (page 2)

日川佳三 2016年07月04日 06時00分

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 印刷

拠点側でラベルを付け、データセンターの入り口でフィルタリング

 新方式では、個々のファイアウォールではなく、データセンターの入り口に新たに設置したフィルタリング用のスイッチ機器がアクセスを制御する(図2)。WANスイッチとコアスイッチの間にアクセス透過型でインライン設置してあり、その存在を意識することなく利用できる。ルールに合致したIPパケットはそのまま通すが、ルールに反したIPパケットは落としてしまう。

図2:カラーリングを採用したネットワーク構成の概要。クライアントのセグメント側ではデフォルトゲートウェイがQoSの仕組みでセキュリティレベルを付与する。データセンター側では入り口に設置したスイッチがセキュリティレベルに応じてIPパケットを通過させたり落としたりする(ソフトバンク提供)
図2:カラーリングを採用したネットワーク構成の概要。クライアントのセグメント側ではデフォルトゲートウェイがQoSの仕組みでセキュリティレベルを付与する。データセンター側では入り口に設置したスイッチがセキュリティレベルに応じてIPパケットを通過させたり落としたりする(ソフトバンク提供)

 例えば、「セキュリティレベル2が付けられたIPパケットはセキュリティレベル3のシステムにはアクセスできない」といったルールを記述しておく。ルールに応じてデータセンターの入り口でパケットをフィルタリングし、通過させるか止めるかするので、ファイアウォール側で個々にフィルタリングする必要がなくなる。

 拠点側では、個々のセグメントのデフォルトゲートウェイがカラーリングを施す。そのセグメントがセキュリティレベル2であればセキュリティレベル2を、セキュリティレベル3であればセキュリティレベル3をIPパケットに付与する。クライアント端末を別セグメントに持ち込めないように、無線LANとIEEE 802.1X認証の仕組みも並行して拠点側に導入した。

 「この仕組みの良いところは、ネットワークに対してほとんど負荷がかからないことと、業務への影響が少ないこと」と長谷川氏は評価する。まず、カラーリングの付与や、カラーリングに基付いたフィルタリングにかかる負荷が小さく、フィルタリングしていることに気付かない。運用面でも、旧方式から新方式へとセグメント単位で少しずつ切り替えていける。

QoSの仕組みをそのままアクセス制御に流用

 カラーリングでは、サービスタイプ(ToS)で用意している8ビットのうち、優先制御(QoS)で利用する6ビット(64段階)のDSCP(Differentiated Services Code Point)値を使う(図3)。DSCPのうち空いている部分を利用して5段階のセキュリティレベルを割り当てた(DSCP値は、6、12、20、28、36)。

図3:5段階のセキュリティレベルを運用している。QoSのDSCP値を利用して、ゲスト用のセキュリティレベルから運用者向けのセキュリティレベルまで5段階のセキュリティレベルを運用している(ソフトバンク提供)
図3:5段階のセキュリティレベルを運用している。QoSのDSCP値を利用して、ゲスト用のセキュリティレベルから運用者向けのセキュリティレベルまで5段階のセキュリティレベルを運用している(ソフトバンク提供)

 DSCPはQoS向けなので、本来であれば「DSCP値が24だったら、それは音声パケットなので優先しましょう」といった使い方をする。これをQoSではなくアクセス制御に利用しようというのが今回の新方式の要だ。5段階のセキュリティレベルはそれぞれ、「インターネット」(ゲスト用)、「試験」(開発者用)、「L2」(全従業員用)、「L3」(顧客管理・対応者用)、「L4」(運用者用)となっている。

 カラーリングはホスト単位でなくセグメント単位とした。同じセグメント上にある2台の端末同士は直接通信し合えるので、同じセグメント上にある2台の端末のセキュリティレベルを分ける意味がない。そもそも同じセグメントにある端末は同じ目的を持った端末なのだから、セグメント単位でセキュリティレベルを分割すればよい。

 2014年に新方式を検討した際には、QoSのDSCP値でカラーリングするという案の他にも、いくつかの案を考慮した。例えば、プロキシを導入してアクセスを集中化させてプロキシ上でアクセスを制御するやり方や、現状で細かい単位に分けているセグメント群を巨大な「/16」(255.255.0.0)のセグメントに集約するやり方などを考慮した。

 ところが、こうした他のやり方は、いずれも適用するまでに時間がかかってしまう。プロキシを新規に導入した場合はプロキシ装置の導入費用もかかる。なるべく既存の仕組みを使いつつ汎用的に使える方法という観点でQoSのDSCP値を利用する現行案を採用した形だ。

 今回、採用した技術は特許第5902264号として公開されている。

ZDNet Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

SpecialPR

連載

CIO
“真FinTech” 地域金融の行方
教育IT“本格始動”
月刊 Windows 10移行の心・技・体
ITアナリストが知る日本企業の「ITの盲点」
シェアリングエコノミーの衝撃
デジタル“失敗学”
コンサルティング現場のカラクリ
Rethink Internet:インターネット再考
インシデントをもたらすヒューマンエラー
エリック松永のデジタルIQ道場
研究現場から見たAI
Fintechの正体
米ZDNet編集長Larryの独り言
大木豊成「仕事で使うアップルのトリセツ」
山本雅史「ハードから読み解くITトレンド放談」
田中克己「展望2020年のIT企業」
松岡功「一言もの申す」
松岡功「今週の明言」
内山悟志「IT部門はどこに向かうのか」
林雅之「デジタル未来からの手紙」
谷川耕一「エンプラITならこれは知っとけ」
内製化とユーザー体験の関係
「プロジェクトマネジメント」の解き方
セキュリティ
セキュリティインシデント対応の現場
エンドポイントセキュリティの4つの「基礎」
企業セキュリティの歩き方
サイバーセキュリティ未来考
ネットワークセキュリティの要諦
スペシャル
デジタル時代を支える顧客接点改革
エンタープライズAIの隆盛
インシュアテックで変わる保険業界
顧客は勝手に育たない--MAツール導入の心得
「ひとり情シス」の本当のところ
ざっくり解決!SNS担当者お悩み相談室
生産性向上に効くビジネスITツール最前線
ざっくりわかるSNSマーケティング入門
課題解決のためのUI/UX
エンタープライズトレンドの読み方
10の事情
座談会@ZDNet
吉田行男「より賢く活用するためのOSS最新動向」
古賀政純「Dockerがもたらすビジネス変革」
中国ビジネス四方山話
ベトナムでビジネス
日本株展望
企業決算
このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]