今回が最後となるIoTセキュリティに関する本稿では、ISV(独立系ソフトウェアベンダー)とインテリジェントデバイスメーカーに焦点を当て、知的財産を守りながらIoTを収益化(マネタイゼーション)する方法について述べる。
IoT(モノのインターネット)によって、私たちを取り巻く世界は誰も経験したことのない形で変化しつつある。IoTはデバイスメーカーに非常に大きな収益化のチャンスをもたらすが、顧客からの厳しい要求事項や、進化するビジネスニーズにも同時に対応しなければならない。
ユーザーは、必要な機能を必要な時に利用して、利用した機能のみに料金を支払うような柔軟な製品やサービスを求めている。一方、サービスを提供する企業側では、かつてない数の新しいISV(独立系ソフトウェアベンダー)とインテリジェントデバイスメーカーが登場し、幅広いソフトウェアおよびクラウドベースのサービスを迅速かつ効率的に提供している。これにより競争は激化し、既存メーカーの利益率および市場投入までの期間の短縮に対してプレッシャーがかかっている。
GartnerによるとIoTの市場機会は1兆9000億ドルに上るが、どうすればこの巨大な市場機会を活かすことができるのか、いまだにデバイスメーカーは明確に把握しきれていないのが現状だ。このように誰もが利益を獲得できる可能性がある環境を背景に、ハードウェアを中心に置いた従来型のアプローチからソフトウェアをベースにしたビジネスモデルへのシフトが進んでいる。
ハードウェアを自社の知的財産とする従来のハードウェアメーカーも、現在はソフトウェアおよびクラウドベースのサービスへと移行しつつある。これらの企業は、もはやデバイスの生産量を増やすだけでは収益を確保できず、また持続可能でもないということを実感している。しかし、ソフトウェアを活用すればデバイスの機能と能力をコントロールできるだけでなく、デバイスに加えてインテリジェントなIoTサービスを柔軟にパッケージ化し、提供、販売することが可能になる。
自動車メーカーや自動車関連会社であれば、ソフトウェア対応のさまざまな機能を柔軟に組み合わせて搭載することができる。ドライバーはそれぞれのニーズに基づいてこれらの機能をオンデマンドで有効化/無効化できる。医療機器メーカーであれば、組み込まれたソフトウェアを通じて患者の状態を遠隔地からモニタリングし、診断を下すことが可能だ。
サプライチェーン上を移動しているトラックも分単位で追跡できるので、企業と顧客の両方にとって効率性と配送の質が高まる。このようにソフトウェアベースのアプローチによって、メーカーは柔軟でシームレスなコネクテッドシステムを構築できる。これらのシステムは顧客に高い価値をもたらすだけでなく、サプライチェーンの非効率性をなくすとともに運用コストを削減しながら、ビジネスの成長と収益の増大を促進できる。
言い方を変えれば、速いスピードで進化を続けているスマートコネクテッドオブジェクトにとって、その主要な差別化要因は製品ではなく、組み込まれたソフトウェアであるということだ。