IoTセキュリティの設計図

IoTの収益化--知的財産の保護とマネタイズのためのエンタイトルメント管理 - (page 2)

前田利幸

2016-08-09 07:00

 ソフトウェアが主要な知的財産であるがため企業は、企業秘密を保護しながら、自社が開発したソフトウェアアプリケーションから利益を生み出す手段を考えなければならない。これが、「ソフトウェアの収益化(マネタイゼーション)」だ。ソフトウェアの収益化を成功へと導く戦略は、著作権侵害対策および知的財産の保護から柔軟なライセンシング、価格設定、パッケージングまでを幅広く網羅している。

 Gartnerによれば、IoTによって新しいタイプのソフトウェアベンダーが登場しており、これらのベンダーが自社製品を保護、差別化、収益化する上で最も重要なのは、ライセンシングや権利や資格などの「エンタイトルメント管理」(EMS)のサービスである。

 Gartnerは、「自社デバイスのソフトウェアの収益化を実現することで、これらのベンダーは繰り返し発生する収益源を生み出し、数十億ドルのさらなる価値を創出することが可能です。例えば、250億以上とも言われる膨大な数の “モノ” が市場に出回っている中で、もしメーカーがソフトウェアを実装している個々のデバイスから平均で5ドルを徴収できれば、1300億ドル近い収益が入ってくることになります」と述べている。これは非常に大きな市場機会だ。


 これらのベンダーには、最も大切な資産である知的財産を著作権侵害や盗難、リバースエンジニアリング、ソフトウェアの不正使用などから保護しなくてはならない。加えてアプリケーションの収益化を実現し、より幅広い利用者層に裾野を広げて収益を増大させるツールも提供できる、効果的なライセンシングのためのサービスが必要だ。

知的財産の保護

 ソフトウェアの不正なコピーや販売、共有、配布など、ソフトウェアの著作権侵害にはさまざまな形があり、単にデバイスで実行しているソフトウェアのバージョンを確認するだけでは十分な対策とはならない。

 インテリジェントデバイスや組み込みソフトウェア、およびクラウドサーバ/クライアントのアプリケーション、またデータ収集とデバイス管理のために数千のサービス担当者がアクセスするユーザークライアントなど、膨大な量のコネクテッドデバイスが存在している。あらゆるタイプのアプリケーションが稼動している環境では、あらゆる場面で厳格なセキュリティ対策が不可欠だ。

 強力な境界線保護からアプリケーションソフトウェアやこれらが生成する全データの保護まで、マルチレイヤ(多層型)のセキュリティによって、各インテリジェントデバイスの中核となる組み込みソフトウェア、クラウドサーバ/クライアントのアプリケーションを保護できる。

 知的財産の保護と収益化の実現において、エンタイトルメント管理の製品やサービスは最新のゲートキーパーの1つだ。非常に詳細なレベルの幅広い管理機能を提供し、想像できないほど膨大な数の組み込みデバイス、サーバ、クライアントアプリケーションのすべてを同時に保護することができる。

 エンタイトルメント管理製品によって、対象のソフトウェアを指定のデバイス以外ではインストールも実行もできないように管理することが可能になり、シンプルな方法で知的財産の不正な使用や配布、盗難を防止できる。また、開発者にとってもセキュリティに関する多様な課題を1つのソリューションで解消することができる。

 適切なライセンスと認証によってアプリケーションへのユーザーアクセスを制御しモニタリングすることで、企業秘密の盗難やリバースエンジニアリング、ソフトウェアの不正利用を阻止する。

 すべてのアプリケーションとこれらのアプリケーションが生成するデータをエンドツーエンドに暗号化することは、データへの不正アクセスに対する強力な防御対策だ。ハードウェアベースの暗号化キーによってデバイスをコードレベルで保護することは、妨害行為や不正操作に対する最大限の防衛策となる。アプリケーションとハードウェアキーの緊密なつながりを確立するチップ技術にこのような暗号化機能を加えることで、たとえ悪意を持った人間がクラックを試みても、解読することはできない。

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