新しいクラウドの潮流

IoTとAIが変えるモバイルクラウドの未来--新しいクラウドの潮流(2)

手塚康夫(ジェナ) 2016年07月05日 07時00分

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Internet of Things(IoT)とモバイルクラウド

 全てのモノがインターネットにつながる「Internet of Things(IoT)」の概念はバズワードとして騒がれる時代は終わり、既に現実世界で実用に入ろうとしている。

 自動車がインターネットにつながってさまざまな情報を収集し、その場でユーザーに最適な情報を提供したり、家やビルなどの建物がインターネットにつながって家電製品や設備機器を制御したりという世界は未来のものではなくなっている。具体的な事例を挙げればきりがないくらいだ。そう、「IoT」が当たり前の世界は既にそこまで来ているのだ。


 IoTを構成する要素としてはセンサ、ゲートウェイ、プラットフォーム、アプリケーション、ネットワーク、そしてクラウドにつながり、さまざまな構成要素が存在するが、この中でもこれからIoTに取り組もうとする企業のプロジェクト成否を左右する重要な要素が「モバイルクラウド」だ。

 現在、多くの企業がIoTに取り組もうとしているが、全ての企業が余裕のある予算/期間を準備できるわけはなく、ゼロから全ての仕組みを創り出すのは難しい場合もある。

 そこで、上記の課題を解決するためにIoTのプロジェクトを成功に導くために「モバイルクラウド」が活用されるケースが増えてきている。「モバイル」と「クラウド」の両方の要素とともに市場や製品が成熟してきたため、高品質で高機能なサービスを安価に利用できるようになった。

 例えば、プロトタイピングやPoC(Proof Of Concept:概念実証)向けのIoTアプリケーションであれば、スマートフォンやタブレットなどのモバイルデバイスとクラウドサービス上で提供されているIoT向けのプラットフォームで提供されている既存のツールやモジュール群を利用すれば、数日間でアプリケーションの開発が可能なのだ。

 このように、既存のツールやモジュール群の活用により、IoTのプロジェクトを加速するための大きな原動力となり得るのだ。

Artificial Intelligence(AI)

 IoTでは、センサなどのデバイスからデータを収集して可視化するだけではなく、高度な分析を実施して収集したデータを価値ある情報に変えることで大きな付加価値が生まれる。

 しかも、そのデータソースはテクノロジの進化に伴い多様化の一途をたどるだろう。現在はデータソースとして、センサから頻度や個数、温度や湿度や圧力などのデジタル化しやすいデータを取得するのが一般的だが、今後は人間を取り巻く全てのものがデータソースになるだろう。

 例えば、IBM Watsonに代表されるようなコグニティブコンピューティングにより、デバイスから得られた人間が話す自然言語を理解し、その理解に基づいてデータに付加価値を与えることが可能になる。すなわち、今や私たちを取り巻く全ての事象がデータソースになり得るのだ。

 データソースの多様化に伴い、データの分析もさらなる進化が求められる。そこで登場するのが「Artificial Intelligence(AI)」だ。多様化したIoTのデータソースの分析にマシンラーニングやディープラーニングを用いることにより、今までは取り扱えなかった自然言語などのさまざまなデータソースから価値ある情報を導き出すことができるようになるのである。

 マシンラーニング(プログラム自身が大量のデータから機械的に学習して予測の精度を高めていく学習法)やディープラーニング(多階層のニューラルネットワークにより、機械が自らデータから特徴の抽出を行い予測の精度を高めていく学習法)の機能をIBM/Microsoft/Google/Amazonといった主要クラウドベンダーがクラウド上で提供することにより、誰でも簡単に利用できる時代になった。そして「モバイル」の活用により多くのデータをアプリケーションで簡単に取得できるようになった。

 このように、AIの活用はクラウドにより身近なものとなりIoTの普及や活用を強力に支援する鍵となるだろう。

 また、IoTにおけるAIの活用範囲は今後さらに広がっていくだろう。クラウド上で提供されるIoTプラットフォームにおけるAIの活用に加えて、ゲートウェイなどのセンサに近い領域での分析にもAIが活用され、全てのデータをクラウド上のIoTプラットフォームにアップロードするのではなく、AIにより必要な情報のみ(もしくはAIが判断した結果のみ)をアップロードする取り組みが始まりつつある。

 将来的には、センサにAIが搭載される時代が到来し、センサ、ゲートウェイ、プラットフォーム、アプリケーション、ネットワークなど、IoTを構成する全てにAIが組み込まれる時代が来るのだ。それは遠い未来ではなく、数年先の近い将来に実現するだろう。

手塚康夫
株式会社ジェナ代表取締役
慶応義塾大学環境情報学部在学中より複数のモバイル関連ベンチャーに参画し、2006年に㈱ジェナを設立。創業時より法人向けのモバイル事業を展開。2009年に法人向けのスマートデバイス総合サービスを開始し、2016年現在、スマートデバイス向けアプリケーション開発では国内トップクラスの実績を持つ。また、ロボット/ウェアラブル/IoT/AIなどの新しいテクノロジーやデバイス向けのアプリケーション開発も手がけ、最新技術の研究や先端事例の創出にも取り組む。

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