通常のラボにあるPCを使って、抗レトロウイルスを利用した治療法の選択と医薬品開発をこれまでより高速に進めようと、スペインのバルセロナにあるBarcelona Supercomputer Center(BSC)が支援に乗り出した。
生体分子がどのように生きた細胞とやりとりするのかを調べるためには、多くのコンピューティングリソースが必要だ。生体分子は体内の維持と代謝プロセスを司る重要なものだ。
コンピューティングリソースの需要という問題に対応するため、BSCは「Protein Energy Landscape Exploration(PELE)」というソフトウェアを開発した。タンパク質の構造を分析するもので、ウェブサーバ経由でアクセスできる。
提供:Barcelona Supercomputing Center
PELEは、薬がどのようにターゲットと作用し合うのかを予測できる。ミシガン大学の研究者グループが行ったCSAR Benchmarkによると、商用ソフトウェアと比較しても優れているという。
BSCはカタルーニャ州のAIDS研究機関であるIrsiCaixaと協業し、PELEを活用して、抗レトロウイルス薬を使ったHIVの治療の効果を予測するバイオインフォマティクス手法を開発している。
この手法は、HIVのDNAシークエンシング、遺伝子変異、コンピュータを用いたタンパク質モデリング、薬とウイルスのタンパク質が結びつくのかのシュミレーションを組み合わせるものだ。
だが、最も重要なこととして、どこのラボにもあるような標準的なPCなど比較的小規模なコンピューティング機器で24時間以内に処理できるという点がある。
これまで、薬の効果におけるHIV突然変異の影響を予測するのには患者の情報が使われていた。このアプローチの欠点として、記録が存在しないものに対しては対応できない点があった。
BSCとIrsiCaixaの考案した手法では、PELEを用いて各遺伝子の突然変異の特性、それに薬のターゲットとなるウイルスのタンパク質内で変異によって生じる変化に基づいて予測できる。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。