IBMクラウド事業戦略--盤石な顧客ベースに十分な勝機

怒賀新也 (編集部) 2016年07月07日 14時17分

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 日本IBMは7月7日、クラウド事業戦略を説明する記者発表会を開催した。日本オラクルの前副社長で、取締役専務執行役員IBMクラウド事業本部長に就任した三澤智光氏が、初めての記者会見に臨んだ。

 今後、クラウドネイティブなものだけでなく、基幹系システムに代表されるSoR(System of Record)、モバイルアプリなどを指すことが多いSoE(System of Engagement)を含めてクラウドに載せる時代になるとし「最終的にはSystem of Innovationになっていく。新しいタイプのアプリケーションがクラウド上で動き始めており、その時ハイブリッドクラウドが重要になる」と三澤氏は指摘した。

日本オラクルの顔だった三澤氏が日本IBMへ。ブロックチェーンなど新しい技術も含め、統合的なクラウド基盤で制御できるようにしていくと話した
日本オラクルの顔だった三澤氏が日本IBMへ。ブロックチェーンなど新しい技術も含め、統合的なクラウド基盤で制御できるようにしていくと話した

 米IBMの会長・社長兼最高経営責任者(CEO)であるVirginia Rometty氏は「IBMはコグニティブソリューションとクラウドプラットフォームの会社」と定義しており、それを受けて三澤氏は「コグニティブという言葉で表現される、これまでにないアプリケーションをクラウド上に展開するものと解釈した」と述べている。

 日本市場について「IBMには堅牢な顧客基盤があり、そのシステムのモダナイズには大きな事業機会がある」という。SoRなど金額ベースの大きい基幹系システムが徐々にクラウド化する流れを取り組むことで、AmazonやMicrosoftなどクラウドの競合他社とは異なる形で成長できるとの考えだ。

 例えば「SoRをクラウド化する意向を持つ顧客の間で、ベアメタルは圧倒的なニーズがある」という。IaaS「SoftLayer」でクラウド上のインフラを自社所有できるベアメタルを選択し、強みである世界規模に張った10Gbpsのネットワークを使えるようにすることで、他社にはできない基幹システムのクラウド移行が可能になる。

System of Innovationへの流れ
System of Innovationへの流れ

 今回、クラウド事業戦略の柱の1つになっているのが、SoftLayerとPaaSである「Blumix」を一体化して「IBMクラウドプラットフォーム」として展開していくこと。「これまでSoftLayerとBluemixを一体として見るイメージがなかった」と、「社外から見ていた時」の印象を語る三澤氏。BluemixからIaaSもPaaSも制御できるようにし、さらに、その上でWatsonベースを含めたアプリケーションを稼働させていくのが基本的なアーキテクチャとなる。

SoftLayer、Bluemix、Watsonというレイヤ構造へ
SoftLayer、Bluemix、Watsonというレイヤ構造へ

 ただし、「安定稼働しているオンプレミスのシステムを必要もなくクラウド化するのはナンセンス」とも話す。

 この日、日本IBMとして、既存システムとクラウドをAPIで連携し、新たなクラウドサービスを開発するためのソフトウェア「IBM Connectシリーズ」を、12月まで無償提供することも発表した。API管理ソフトウェア「IBM API Connect」を中心に、WebShereユーザーのAPI公開を支援する「IBM WebSphere Connect」や業務ユーザー向けアプリケーション連携ソフト「IBM AppConnect」を提供する。

 また、他のデータセンターなどとSoftLayerデータセンターのダイレクト接続サービス「ダイレクト接続 for IBM SoftLayer」も随時拡充している。

 既存の基幹系システムを直接クラウドに載せ替えるというよりも、APIなどを経由して、新たなアプリケーションと既存システムを連携させることで、企業による新しい付加価値提供を支援するのが、現在のIBMのクラウド提供での立ち位置と言える。もちろん、IBMにとってメインフレーム事業が収益の柱になっていることも大きく関係してくる。

 新たな戦略の実行に際して、社内組織も変更する。従来、クラウドサービスとクラウドソフトウェアに分かれていた部門を統合し、新たに「IBMクラウドプラットフォーム」を設立した。

 VMwareやSAPなどグローバルでのパートナーシップの拡充にも注力している。VMwareのサーバ仮想化ソフトウェアである「vSphere」やネットワーク仮想化ソフトウェア「NSX」を含めたすべてのライセンスを、IBMクラウドから一元的にCPUの月額課金で利用できるようにした。サブスクリプション形式でVMwareのソフトウェアを利用できるのはIBMが唯一としている。また、L2を延伸することで、データセンター間でのvMotionも可能にした。

 7月6日には、三澤氏が長く所属していた日本オラクルが富士通とクラウド分野で協業すると発表。「企業向けクラウドが加速していると感じた」とコメントした。

クラウド基盤構築に不可欠になったオープンソースソフトウェアでの他社と協業もアピールした
クラウド基盤構築に不可欠になったオープンソースソフトウェアでの他社と協業もアピールした
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

関連ホワイトペーパー

SpecialPR

連載

CIO
研究現場から見たAI
ITは「ひみつ道具」の夢を見る
内製化とユーザー体験の関係
米ZDNet編集長Larryの独り言
今週の明言
「プロジェクトマネジメント」の解き方
田中克己「2020年のIT企業」
松岡功「一言もの申す」
林 雅之「デジタル未来からの手紙」
谷川耕一「エンプラITならこれは知っとけ」
Fintechの正体
内山悟志「IT部門はどこに向かうのか」
情報通信技術の新しい使い方
三国大洋のスクラップブック
大河原克行のエンプラ徒然
コミュニケーション
情報系システム最適化
モバイル
通信のゆくえを追う
セキュリティ
サイバーセキュリティ未来考
セキュリティの論点
ネットワークセキュリティ
スペシャル
Gartner Symposium
企業決算
ソフトウェア開発パラダイムの進化
座談会@ZDNet
Dr.津田のクラウドトップガン対談
CSIRT座談会--バンダイナムコや大成建設、DeNAに聞く
創造的破壊を--次世代SIer座談会
「SD-WAN」の現在
展望2017
IBM World of Watson
de:code
Sapphire Now
VMworld
Microsoft WPC
HPE Discover
Oracle OpenWorld
Dell EMC World
AWS re:Invent
PTC LiveWorx
古賀政純「Dockerがもたらすビジネス変革」
さとうなおきの「週刊Azureなう」
誰もが開発者になる時代 ~業務システム開発の現場を行く~
中国ビジネス四方山話
より賢く活用するためのOSS最新動向
「Windows 10」法人導入の手引き
Windows Server 2003サポート終了へ秒読み
米株式動向
実践ビッグデータ
日本株展望
ベトナムでビジネス
アジアのIT
10の事情
エンタープライズトレンド
クラウドと仮想化