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日本株展望

ブレグジット不安一巡でもEU不安の種は尽きない - (page 2)

ZDNet Japan Staff

2016-07-14 10:43

共通通貨ユーロの幻想

 出口の見えないEUの構造問題の元凶は何かと考えると、共通通貨ユーロに行き着く。今になってみると、経済構造がまったく異なる欧州の国々が統一通貨を持つという構想は幻想だったと言わざるを得ない。

 ギリシャの債務問題を悪化させたのは共通通貨ユーロの存在だ。ギリシャは2001年に自国通貨ドラクマを廃止して共通通貨ユーロを採用した。もしギリシャがEUに加盟せず、通貨ユーロを使用していなければ、ギリシャの通貨ドラクマは、2001年以降、経常赤字の拡大とともに対ユーロ・対ドルで下落し続けたはずだ。

 通貨が下落すれば、輸入インフレが引き起こされ消費が抑えられる。一方、観光業や海運業など外貨を稼ぐギリシャの自国産業は通貨安で活性化する。経常赤字拡大→通貨下落→経常赤字減少という「教科書的な為替調整機能」が働いていたはずだった。

 ところが、ギリシャはドイツの信用で支えられた通貨ユーロを使用していたため、通貨は高止まりし、為替による調整機能が働かなかった。ユーロを使い続けていたギリシャは、経常赤字を拡大させても通貨安による輸入インフレに見舞われることがなく、さらに経常赤字が拡大するという構造に陥っていた。

 スペインもポルトガルもイタリアも、大なり小なり同じ構造問題を抱えている。自国通貨が下がることによる「消費抑制効果」「輸出産業の活性化」が働かないため、過剰消費は抑えられない。そのまま放置すると最後は、ドイツなど経済強国からの補助金で埋め合わせなければならなくなる。そうなっては困るから、ドイツはEUを通じて、強権を発動して緊縮財政を強制しようとするのだ。

 スペイン、ポルトガル、イタリア、ギリシャは、自国通貨の下落によるインフレによって消費が抑圧されるならば、それは自国経済が弱いためとあきらめるだろう。ところが、EUドイツの命令で、緊縮財政をやらされ、それで消費が抑圧され、景気が低迷していると聞かされると、EUへの怒りが蓄積していく。

 今のところ、南欧諸国の反EU勢力は「反緊縮」「反移民」を唱えているだけで、EUからの離脱を明確には宣言していない。自国通貨を捨て、共通通貨ユーロを採用してしまった以上、それを自国通貨に戻すにはあまりに巨額のコストがかかるからだ。EUに留まった上でEUの規制に反旗を翻すスタンスをとっている。

 英国がEUからの離脱を決断できたのは、通貨まで共通化せず、英ポンドを残していたからだ。通貨を人質にとられたEU諸国は、EUからの離脱を簡単に口にできない。

 反EU・反緊縮を掲げて2015年1月に成立したギリシャの急進左派チプラス政権も、EUに残留した上で緊縮を放棄することを宣言していた。ところが、緊縮を放棄すると、EUからの金融支援が受けられず、ギリシャ国債がデフォルトし、EUから離脱を迫られることがわかったため、チプラス政権は、公約違反であることを認めつつ、EUが求める緊縮策を受け入れざるを得なかった。

 今、スペインやポルトガルの制裁を議論するのは、これらの国がユーロを捨ててユーロを出ていくことができないと見透かした行為と考えられる。ただし、このように反EU勢力を刺激する行為を続けていると、いつか、欧州の反EU勢力が予想もできない暴走を始めるリスクがないとはいえない。

 ブレグジットへの不安は足元、小康状態にあるが、EUの構造問題への不安は今後、何度も繰り返す可能性があることを意識しておく必要があるだろう。

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