業務アプリケーションベンダーの米Inforが、これまでの領域を拡大して企業同士がつながるビジネスネットワーク分野を強化する。同社が米ニューヨークで7月10日から開催した年次イベント「Inforum 2016」で最高経営責任者(CEO)のCharles Phillips氏が明らかにした。鍵を握るのは同社が2015年夏に買収したGT Nexusだ。企業間ネットワークにつながった「マルチエンタープライズERP」を構築、企業に参加を呼びかける。
ビジネスネットワークでつながるマルチエンタープライズERP
デジタル化が企業のシステムを変え、新しいビジネスモデルの源となっている。企業はすでにクラウドの導入を進めており、この素地はサプライチェーンをさらに効率化する大きなチャンスとなる。さまざまな企業が取引を目的に参加するビジネスネットワークは、企業のグローバル化を後押しするという点でも朗報だ。
実際、「グローバルのサプライチェーンを効果的に運用するためには、パートナーのところにある80%のデータが必要」とPhillips氏は言う。「企業外にあるデータを活用するために、われわれはGT Nexusを買収した」と続ける。買収は2015年8月に発表され、Inforは6億7500万ドルを投じた。
Infor コマースクラウド担当ゼネラルマネージャー Kurt Cavano氏
「企業の外で大切なことが起こっている。企業がつながり、ソーシャルになり、コマースしたり、情報をやり取りしたりする――。ネットワークにつながった企業が将来の企業の形だ」とGT Nexusを1998年に創業し、現在Inforでコマースクラウド担当ゼネラルマネージャーを務めるKurt Cavano氏は述べる。企業はすでに製造をアウトソーシングしており、複数のレイヤのサプライヤーを抱えている。
これまでの統合基幹業務システム(ERP)が社内のプロセスなどを自動化するシステムだとすれば、企業との間で起こるプロセスを自動化するのがGT Nexusだ。「最大の企業間ネットワークをクラウドに構築した。自社の製品がどこにあるのか、支払いはどうなっているのか――。財務と物理の両方でサプライチェーンを支援する。これを自動化、セルフサービスにできれば、もっと効率性が改善される」と説明する。このようなビジネスネットワークで拡張した新しい業務アプリケーションの姿をCavano氏は「マルチエンタープライズERP」と形容した。
Cavano氏は平均的な1日のGT Nexusのダッシュボードを見せる。この日は2億8500万のユニークアイテムが出荷され、取引高は約2億2000万ドル。現在、NikeやLevi Straussなど2万8000社がGT Nexusを利用しており、直接の調達金額は400億ドル。プラットフォーム上で1000億ドル規模の製品、1100万個のコンテナが管理されているという。輸送という点では、陸上と空を行き交う運送の70%、海上では95%に相当する企業が参加しており、取引という点では約40の金融機関が参加するネットワークだ。
ビジネスネットワークは、SAPもAribaを買収して構築を進めているところだ。InforumではGT Nexusネットワークを利用する企業によるセッショントラック「Bridge」も開催されており、Phillips氏は(1)業界へのフォーカス、(2)デザイン、(3)データサイエンス、(4)インターネット標準の利用に続く「5番目の戦略の柱」と位置付けた。
発注した製品を追跡できる出荷モニタリング画面。中国から米国への発送状況を予想到着日とともに確認できる
InforはGT Nexusを5つ目の柱「Network」に位置付ける