7月6~7日に開催されたOpenStack Days Tokyo 2016ではJFEスチールやGMOなどの導入事例が発表され、エンジニアを多く抱えるNECやNTTグループなどのITリテラシーが高い企業以外にもOpenStackの導入が進んでいることがうかがえた。しかし実際にOpenStackをプライベートクラウドとして社内に導入する場合、いくつかの選択肢があると言われている。
最初の選択肢、そして最もハードルが高いと思われるものは、OpenStackのUpstream版をダウンロードし、自社のニーズに合わせて必要なコンポーネントを組み合わせて構成するやり方だ。この方法を選択した場合、自社が既に持っているサーバ、ネットワークスイッチやルータ、ストレージなどのシステムをフルに活用できる可能性があるという利点がある。
ただし、既存のシステムのバージョンや対応の度合いによって、稼働可能かどうかを判断する必要がある。もちろん、サーバを最新のホワイトボックスサーバで統一し、ネットワークもストレージも全てソフトウェア制御可能なサービスで実現するという方法論もあるだろう。FacebookやGoogleがOpen Compute Projectで実現しようとしているのはこういうコモディティなハードウェアとソフトウェアでデータセンターの構成要素を実現しようという試みだ。
OpenStackをこの方法論で実現しようとすれば、社内に相当OpenStackに詳しいエンジニアが居ること、そのエンジニアはOpenStackのコミュニティで何が進行しているのかを常にチェックしているぐらいのリテラシーが必要だろう。
次の選択肢は、RedHatやCanonical、SUSE、Mirantisなどがリリースしているディストリビューションを使うことだ。この方法論であれば、最低限、ベンダーが対象としているコンポーネントは稼働することが確認されていることになる。ただ、オープンソースソフトウェアであったとしてもサポートの名目である程度の予算を用意する必要があるだろう。
このどちらも複雑で常に進化しているOpenStackを安定して稼働させるための人的労力か予算を用意する必要がある。また、半年ごとにリリースされるバージョンを追いかけるのか、安定稼働したバージョンを使い続けるのか、古いバージョンで不具合が発生した場合に修正を自社で行う覚悟はあるのか、という悩みも尽きない。
そんな状況の中で3つ目の選択肢として、OpenStack-as-a-Serviceを提唱するベンダーがある。Platform9という元VMwareのエンジニアが創業したシリコンバレーのベンチャーだ。前置きが長くなったが、導入が難しいというOpenStackの弱点を補う形のサービスを展開している。今回は日本でのビジネス展開をディストリビュータとして支援するネットワールドの工藤真臣氏と三好哲生氏に話を聞いた。工藤氏はシステムエンジニア、三好氏はマーケティングの立場からPlatform9のユニークな特長を解説した。
――まずPlaform9とは何かを説明してください。
三好氏 これはよく誤解されるんですが、、Platform9はIaaS(Infrastructure as a Service)ではありません。また他のホステイングベンダーさんが提案しているラックの中のハードウェアを貸します、それにOpenStackを入れてそれをホスティングします、運用は自社でやってください、という形式のものとも違います。
簡単に言えば、顧客の自社のデータセンターのハードウェアにOpenStackを入れて運用できるんですが、OpenStackの運用に関わるインストールや検証はPlatform9がやります、でもデータは御社で管理してくださいというものです。OpenStackの一番面倒な部分を簡略化して、本来の目的であるクラウド環境を素早く提供する、ということを目指しているサービスです。

OpenStack as a Serviceとは