編集部からのお知らせ
New! 記事まとめ「ISMAP-LIU」
話題の記事まとめ「通信障害と社会リスク」
展望2020年のIT企業

日本のIT産業がいびつな理由 - (page 2)

田中克己

2016-07-21 07:00

SIは儲からない現実

 IT産業の構造的な問題もある。階層構造の頂点に立つ富士通やNECなど大手ITベンダーがリスクをとり、彼らからアプリケーション開発を請け負う受託ソフト開発会社はリスクをとらない。目先の利益を優先し、先端IT活用に手を出さない企業もあるが、多くは営業利益率5%程度にとどまる。

 加えて、「こうしてくれ」「この機能を追加してくれ」「言ったことが盛り込まれてない」といったユーザー企業の無理難題な要求に応えるものの、見合い料金がなかなかとれないことにもある。ユーザーが「システム構築費の安さ」を選択基準の1つにしたことで、価格競争も激化する。構築の価値を認めないからだろう。認める価値がないのかもしれない。これでは、IT産業に優秀な人材が集まらないことになる。

 だが、グーグルやアップルなどシリコンバレーを拠点にする米IT企業は優秀なIT人材を積極採用する。シリコンバレーのIT技術者の平均給与は15万ドル程度、データサイエンティストやセキュリティのプロになると最低50万ドルとも言われているそうだ。

 「だからこそ、世界のエリートがシリコンバレーにむかう」(金丸会長)。海外のユーザー企業もIT人材の確保、育成に力を入れている。米GEは製造業からサービス業へと変身する一環から、ソフト技術者を大量採用し、産業用プラットフォームを開発する。

 金丸会長は「ユーザーのレベルによって、IT産業のレベルが変わる」と考えている。歓迎すべきことは、トヨタ自動車やファナック、パナソニック、LIXILなどが、AIやIoTなどの活用に果敢に挑み、ハードとソフト、サービスを組み合わせたビジネスモデルを創出しようとしていること。IT人材育成の環境も整備される可能性も生まれる。

 小学生のプログラミング教育が義務化されること。「プログラミングは、サラリーマンの仕事ではない。社会人になってから勉強しているが、そんな単純な仕事ではない」。金丸会長自身も理系ベンチャーの組織化に取り組む。イノベーションをおこせるアントレプレナーの育成で、新しいことに挑戦するなどリスクをとる若い起業家を育てたいからだろう。「大企業にいかないで」との思いもあるだろう。

 IT企業は、世界の競争に勝てる技術力と新しいビジネスモデルを創り出すことだ。

田中 克己
IT産業ジャーナリスト
日経BP社で日経コンピュータ副編集長、日経ウォッチャーIBM版編集長、日経システムプロバイダ編集長などを歴任し、2010年1月からフリーのITジャーナリストに。2004年度から2009年度まで専修大学兼任講師(情報産業)。12年10月からITビジネス研究会代表幹事も務める。35年にわたりIT産業の動向をウォッチし、主な著書に「IT産業崩壊の危機」「IT産業再生の針路」(日経BP社)、「ニッポンのIT企業」(ITmedia、電子書籍)、「2020年 ITがひろげる未来の可能性」(日経BPコンサルティング、監修)がある。

ZDNet Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. セキュリティ

    【講演資料】Sentinel運用デモ-- ログ収集から脅威の検知・対処まで画面を使って解説します

  2. セキュリティ

    SASEのすべてを1冊で理解、ユースケース、ネットワーキング機能、セキュリティ機能、10の利点

  3. ビジネスアプリケーション

    北海道庁、コロナワクチン接種の予約受付から結果登録まで一気通貫したワークフローを2週間で構築

  4. セキュリティ

    Sentinel運用デモ-- ログ収集から脅威の検知・対処まで画面を使って解説します

  5. セキュリティ

    セキュアなテレワーク推進に欠かせない「ゼロトラスト」、実装で重要な7項目と具体的な対処法

NEWSLETTERS

エンタープライズ・コンピューティングの最前線を配信

ZDNet Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]