本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、マカフィーの山野修 代表取締役社長と、アクセンチュアの立花良範 執行役員の発言を紹介する。
「セキュリティベンダー同士でサイバー脅威情報を共有したい」 (マカフィー 山野修 代表取締役社長)
マカフィーの山野修 代表取締役社長
米Intel Securityの日本法人であるマカフィーの新社長に5月30日付けで就任した山野氏が先ごろ、新しい経営体制や事業戦略について記者説明会を開いた。同氏の冒頭の発言はその会見で、Intel Securityとして新たに取り組み始めた協業戦略を語ったものである。
山野氏の会見内容は関連記事を参照いただくとして、ここでは冒頭の発言の意図を探ってみたい。同氏はその意図について、次のように説明した。
「従来、セキュリティベンダーは個々でサイバー脅威情報を収集・蓄積・分析し、それぞれの製品やサービスに活用してきた。つまり、脅威情報を活用する力が個々のセキュリティベンダーにとって競争優位の源泉になっていた。しかし、昨今では標的型攻撃のように巧妙なサイバー脅威が出現し、セキュリティベンダー1社では脅威情報を的確にとらえて製品・サービスに活用することが難しくなってきた」
「そこで私たちは、巧妙なサイバー脅威に対応していくためにセキュリティベンダー同士が連携を図り、脅威情報やその対策を共有することでそれぞれの製品やサービスを強化していく体制が必要ではないかと考え、自ら率先して脅威情報を同業他社にもオープンにしていく取り組みを始めた。セキュリティ業界を挙げてこうした情報共有の仕組みをつくっていくことが、大きなユーザーメリットになると考えたからだ」
Intel Securityではこうした考え方にのっとって、脅威情報の共有やセキュリティ機能の連携を推進する「インテルセキュリティイノベーションアライアンス」、および巧妙化するサイバー脅威に対応するための情報を共有する「サイバースレットアライアンス」といった2つのパートナーエコシステムを構築している。
その勢力としては、前者は現時点で150社を超えるパートナーとの協業を推進している一方、後者ではPalo Alto NetworksやSymantecなどの有力なセキュリティベンダーとの連携を図っているという。
山野氏はこうした取り組みに対し、「セキュリティ市場にもようやくオープン化の波がやってきたと実感している。Intel Securityの方針に沿って、日本でもパートナーエコシステムの拡充に一層注力していきたい」との姿勢を示した。