Microsoftは、同社のクラウド上で現在提供しているCRM製品とERP製品を1つにまとめた「Microsoft Dynamics 365」サービスを2016年秋から一般提供しようとしている。このサービスの中核にあるのは、「共通データモデル」というものだ。本記事では、共通データモデルとは何か、そしてその重要性について解説する。
同社は米国時間7月6日にDynamics 365を発表した際、企業の意思決定者に向けたアピールに力を入れ、技術的な詳細についてはあまり踏み込まずにいた。
しかし、同社が近々一般提供を開始しようとしている、クラウド向けのこのERPとCRMのマッシュアップ製品を支える技術についての疑問が、筆者のもとに数多く寄せられてきている。
そういった疑問のなかで、筆者も答えを知りたいと思ったのが、Dynamics 365の中核に位置する共通データモデルとは一体何なのかというものだ。
MicrosoftはDynamics 365を提供する計画を発表した際、同サービスでは「Office 365」と共用される共通データモデルを使用し、データ管理、そしてアプリとビジネスプロセス間の統合をシンプルにすると述べていた。
しかし現在のOffice 365には、「共通データモデル」という言葉は見あたらない。筆者が困惑したのはこの点だ。
7月20日付けで公開されたMSDynamicsWorld.comの記事のおかげで、パズルのピースがいくつか見えてきた。共通データモデル、すなわちCDMとは具体的に言えば、「PowerApps」の一部として導入されたものだという。PowerAppsは企業ユーザーや開発者によるカスタムアプリの開発を支援するサービスであり、4月にパブリックプレビュー版がリリースされている。
PowerAppsに関するMicrosoftの7月11日付けのブログ投稿によると、CDMは「ビジネスエンティティの格納や管理を目的とする、すぐに使える企業向けデータベース」だという。また、CDMのパブリックプレビュー版は8月にリリースを予定しているという。
この投稿ではCDMについて以下のようにも記されている。
CDMはセキュアなデータモデルだ。保存状態にあるデータ(Data at Rest)は暗号化される。またCDMは、『Azure Service Fabric』や、『Azure SQL Database』の『Elastic Database』機能といった、Azureが誇るテクノロジを採用しているため、スケーラビリティにも優れている。さらにCDMは、標準となるエンティティを提供するだけでなく、標準となるエンティティを拡張したり、標準的なエンティティに関連のある新たなエンティティを追加したりすることで、新たなカスタムエンティティを構築する機能も提供する。この他にも、構造化されたメタデータや、リッチなデータ型、オートナンバー、ルックアップ、住所や通貨などのビジネスデータ型に加えて、メタデータのコンフィグレーションによる参照整合性といった機能や、カスケード削除といった機能も提供するため、とても訴求力がある製品となるだろう。そして、CDMは徐々に新規機能を追加していき、エンティティ関連の機能や、エンティティ用のプロセス、そういったエンティティのための既存フォームなどを拡張していく予定だ。