より賢く活用するためのOSS最新動向

OSSライセンスとの付き合い方 - (page 3)

吉田行男

2016-08-03 07:00

気を付けなければいけないことは?

 それでは、このようなライセンスと付き合うためにはどのようなことに気を付けなければいけないのでしょうか?気をつけなければいけないことは、「利用者側」と「提供者側」で変わってきます。

(1)「利用者側」の場合

 システム構築やソフトウェア開発の現場でOSSを活用することが想定されますが、ポイントは「ライセンスの伝搬」です。ソースコードに手を入れずにそのまま使用するのであれば、どのような活用をしても、何の影響もありません。

 しかしながら、「OSSのソースコードを修正」したり、「OSSとリンクする」とライセンスによって、とるべき対応が変わってきます。その中で最も利用者として避けたいと思っているのは、自社で作成したソースコードを公開しなければいけないことです。

 となると表1のように、「コピーレフト型」のOSSは敬遠される傾向が強く、「非コピーレフト型」のOSSを活用される傾向が強いようです。とはいえ、「コピーレフト型」のOSSを活用せざるを得ない場合は、影響範囲を最小限にするべく、いろいろ検討しているというのが現状です。

(2)「提供者側」の場合

 一方、提供者側の思惑は利用者側とまったく逆であると言えます。自らが作成したソースコードを公開した場合に、他のコミュニティメンバーからのさまざまなフィードバックを受けれるかどうかがポイントです。もちろん、BSD系のライセンスを採用した場合でも、コミュニティにフィードバックしてもらえるわけですが、独自の修正を施した場合は必ずしもコミュニティにフィードバックしなくてもよく、極端な場合は、自社製品にされてしまうケースも考えられます。

 では、この場合はどのようなライセンスを選ぶのが良いのでしょうか?

 そもそも、OSSで公開する目的は何なのでしょうか?自らが作成したソフトウェアを広く世の中の人に使ってもらいたいというのが第一義でしょうが、それだけではないケースもあります。以前、ご紹介したMidonetのように大手企業への納入条件でOSSにすることを指定されたケースや、開発費用が財務的に耐えられずコミュニティに開発をゆだねるケースなど、さまざまな動機が考えられます。

(a)自社製品化をこだわる場合

 自社製品にすることを前提にする場合は、BSD系のライセンスを適用することが現実的でしょう。自社製品化に伴って、OSSの部分に追加機能で独自機能を実装することで、OSS版との差別化を図る場合がこのケースになると思います。

(b)あくまでもOSSにこだわる場合

 ビジネスを展開する上で、コミュニティからのフィードバックを最大限活用したい場合は、GPL系のライセンスすることをお勧めします。コミュニティに公開することで、コミュニティメンバからの不具合の指摘や不具合の修正などを得ることができます。

まとめ

 OSSと付き合う上では、ライセンスに関する基礎知識がないと、さまざまな問題が発生する危険性があります。その意味でも、正しい知識を学ばれることをおすすめします。世の中には、さまざまな情報があふれており、どれを信用してよいか難しいですが、詳しい人を紹介してもらうのが良いでしょう。

 ということで、今回はライセンスについて簡単にご紹介してきましたが、また、折をみて、詳しくご紹介することも検討したいと思います。

※本文中記載の会社名、商品名、ロゴは各社の商標、または登録商標です。

吉田行男
日立ソリューションズ 技術開発本部 研究開発部 主管技師。 2000年頃より、Linuxビジネスの企画を始め、その後、オープンソース全体の盛り上がりにより、 Linuxだけではなく、オープンソース全般の活用を目指したビジネスを推進している。 現在の関心領域は、OpenStackを始めとするクラウド基盤、ビッグデータの処理基盤であるHadoop周辺及びエンタープライズでのオープンソースの活用方法など。

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