IT企業との関係を見直すユーザー企業
そこで、ガートナーはIT企業に5つの施策の検討を勧める。第1は、グローバル市場の対応だ。
国内市場が伸び悩む中で、成長の活路を海外に求めるユーザー企業は少なくない。彼らのIT活用力に併せて、「現地に技術者を派遣する」「現地にIT要員が不在なので、日本から対応する」「側近のように技術者を常駐させる」「オフショア拠点を転用し、地場企業も支援する」「地場IT企業をM&Aする」といった策をとる。
第2は、ITサービス・デリバリを改革すること。まずはITサービスの効率化を図るために、コストの圧縮や生産性向上を図る。たとえば、アプリケーションテストの自動化やデータセンターの運用自動化、業務アウトソーシングのプロセス自動化などだ。ユーザー企業のビジネス変革に素早く対応できるようサービス提供のスピード化も図る。アジャイル開発の推進がその1つになる。各IT企業が提供するサービスを容易に載せられるプラットフォームも整備する。
第3は、顧客アプローチの改革だ。例えば、ユーザー企業の製品開発に入り込んだプロジェクト支援を展開する。第4は、新たなバリューネットワークの構築。ユーザー企業や競合他社などITの枠を超えたパートナー作りによって、異なる価値を提供することだ。
第5は、デジタルビジネスの支援に対する立ち位置をはっきりさせること。新しいビジネスの創出に向けたコンサルティング、実装/SI、運用/管理のどの工程を支援するかだ。ガートナーによると、数年以内にユーザー企業の3社に1社が戦略パートナーを変える。デジタルビジネスの支援をIT企業以外に求めるIT部門も、2割になると予想する。
長期のアウトソーシング契約を見直し、2年や3年契約に変更したり、運用を内製化したりするユーザー企業も増えている。IT部門が最適なサービスを選定する力をつけからだろう。IT企業は自社の強みを鮮明にしなければ、ユーザー企業から選ばれなくなる。
- 田中 克己
- IT産業ジャーナリスト
- 日経BP社で日経コンピュータ副編集長、日経ウォッチャーIBM版編集長、日経システムプロバイダ編集長などを歴任し、2010年1月からフリーのITジャーナリストに。2004年度から2009年度まで専修大学兼任講師(情報産業)。12年10月からITビジネス研究会代表幹事も務める。35年にわたりIT産業の動向をウォッチし、主な著書に「IT産業崩壊の危機」「IT産業再生の針路」(日経BP社)、「ニッポンのIT企業」(ITmedia、電子書籍)、「2020年 ITがひろげる未来の可能性」(日経BPコンサルティング、監修)がある。