売上高400億ドル弱、従業員13万6000人の企業であるOracleを知らない人はいないだろう。同社は近年、オンプレミスソフトウェア企業から、大手クラウドプロバイダーへと変貌を遂げつつある。この戦略の変化は、製品開発から営業、マーケティングに至るまで、同社のあらゆる部分に影響を与えている。
筆者は、Oracleのアプリケーション開発担当エグゼクティブバイスプレジデントを務めるSteve Miranda氏から話を聞いた。インタビューの話題はクラウド戦略や開発プロセス、優れたソフトウェア実装プロジェクトの進め方についての顧客へのアドバイスなど、多岐にわたった。
取り上げた話題の1つは、Oracleのソフトウェアスイートの重要性についてだ。
エンタープライズソフトウェアベンダーの間でも、ソフトウェアスイートと、ベストオブブリード方式(別々のベンダーが提供する、各分野で最善のソフトウェアを組み合わせるやり方)のどちらが有利かは、議論の的であり、理念や戦略、競争などの観点で大きな論点となっている。
本来は複雑な問題をあえて単純化して説明しよう。ソフトウェアスイートの製品は連携して動作し、データ、ユーザーインターフェース、セキュリティ機能を共有しているとソフトウェアスイートのベンダーは主張する。このため使いやすく習熟も簡単であり、スイートの中核的なソフトウェアがすでにインストールされているため、機能やモジュールを素早く追加できると利点を挙げる。それに対し、ベストオブブリード陣営のベンダーは、スイート全体のインフラを構築するオーバーヘッドなしに、特定の分野で最高の製品を提供することに力を集中していると主張する。その結果、それらのベンダーの製品は、小規模で、より安価で、実装しやすいものになっているというわけだ。
どちらが正しいかは宗教戦争に近いが、この問いにはいくつもの問題が複雑に絡みあっており、絶対的に正しい答えは存在しない。エンタープライズソフトウェアの完全なスイートを構築するには膨大な時間と投資が必要なことから、一般には大規模なベンダーがソフトウェアスイートを提供している場合が多い。
Miranda氏はインタビューの中で、ソフトウェアスイートに関するOracleの立場を説明しつつ、エンタープライズユーザーがこの重要な問題についてよく理解できるよう、その背景と文脈についても語っている。
45分間のインタビューはCXOTalkのサイトで視聴でき、書き起こし全文も掲載されている。
以下は、インタビュー動画の書き起こしから要点をまとめ、ソフトウェアのカスタマイズについてのMiranda氏の発言を付け加えたものだ。
--ソフトウェアスイートとはどういうもので、なぜOracleにとってソフトウェアスイートが重要かを教えてください。
スイートとは人事、財務、サプライチェーンマネジメント(SCM)、顧客体験(CX)などのアプリケーションを集めたものです。Oracleはそれぞれの分野で、ベストオブブリード製品を提供する企業や、完全なスイートや部分的なスイートを提供する事業者と競争しています。当社は個々の製品群に力を注いでおり、各分野での競争力を高めることに全力を尽くしています。
とはいえ多くの場合、顧客にとってシステムの統合はコストです。これは、Oracleやパートナーに支払う月額料金やライセンス費用の話ではありません。システム間でデータを共有するコストや、システム全体をオーケストレーションするためのビジネスプロセスのコストの話です。
顧客がビジネスを差別化するために非常に重要な分野があったとして、その分野のベストオブブリードのソフトウェアを導入するよりも、統合されたスイートに次のアプリケーションを追加することで、より早く価値を手に入れることができるでしょう。追加する方が早く、管理や維持もより経済的で、統合のコストもかかりません。