コネクテッドの可能性--産業用IoTで設計者が知っておくべき通信の論点

Simon Glassman (u-blox AG ストラテジックパートナーシップ部門シニアプリンシパル) Mats Andersson (u-blox AG プロダクトセンターショートレンジラジオ部門テクノロジシニアディレクター) 2016年08月03日 08時00分

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 産業向けIoT(Industrial IoT:IIoT)は真に重要な多くのIoTアプリケーションの1つであり、その設計と実装には技術基準地セキュリティのベストプラクティスの厳格な順守が必要であると同時に、コンテキスト情報を最大限に活用し、コストと市場投入までの期間のニーズを満たすことが求められる。この高い要件をクリアすべく、現状IIoT設計者が知っておくべき通信に関する現状をまとめてみた。

 IIoTまたはIndustrie 4.0と呼び方は異なっても、プロセスと成果の改善に向けたデータのセンシング、通信、分析は、製造業や医療、交通、車両運行管理、鉱業、農業まで、さまざまな産業を変容させつつある。

 これまでは、できるだけ多くの生データを取得して分析し、意思決定者に提示することに重点を置いていたが、データ取得の「位置とタイミング」が、セキュアな通信やデータそのものと同じくらい重要になってきている。このように「コンテキストリッチ」なデータへと重点がシフトすることで、IoTアプリケーション分野のアプリケーション開発者とシステム設計者にとって刺激的なチャンスが生まれている。

 たとえば、タイヤ空気圧やサスペンションの監視センサを使用して路面の危険な隆起や陥没を検知するだけでなく、それらのデータと正確な位置データを結合して通信することで、車列の他のトラックがその地点を回避し、車列全体の被害を防ぐことができる(図1)。

図1:コネクテッドインダストリーは、製造業、運輸、医療、農業まで、高精度な位置データとタイミングデータから生成される深層コンテキスト情報が有効となる、多くの重要分野に拡大している
図1:コネクテッドインダストリーは、製造業、運輸、医療、農業まで、高精度な位置データとタイミングデータから生成される深層コンテキスト情報が有効となる、多くの重要分野に拡大している(u-blox作成)

 すでに、車列の車両の基本的な側面の多くが電子ログデバイス(ELD)を使用して監視されている。重要なパラメータは、走行距離、位置、停止回数、エンジン使用状況、稼働時間などである。振動、湿度、排気ガスなどの変数を追跡するため、圧力やガス、温度のセンサがタイヤとエンジン制御ユニット(ECU)に組み込まれたことで、全体的な車両の健全性をリアルタイムで監視できるようになっている。

 これにより、工場内と同様に、致命的な障害に対する予測的なメンテナンスが可能だ。もちろん、最大の相違は、正確な測位技術と安全なデータ通信を使用して車両を追跡する必要があるという点である。

 車両運行管理や旅客輸送業界は、半自律または完全自律走行車を見据えているため、このような高精度の位置情報の提供を実現するには、まったく新しいアプローチを導入する必要が生じてくる。自律走行車は、人間の介入の必要性を排除し、事故の少ない経済的な交通システムとなる見通しである。

 農業分野では、IIoTが世界の食糧供給を支援するだろう。2050年までに世界人口は91億人になると予想されており、インターネットに接続した“コネクテッドセンサ”を使用して、温度や土壌の状態、日光、湿度を追跡することで最適な農地利用に必要なデータを提供できるようになるだろう。高精度な位置情報サービスとタイムリーな情報通信は、最適なタイミングで迅速かつ効率的に作物を収穫するために役立つと考えている。

 医療分野では、患者の転倒や血圧の上昇、または不整脈が発生した正確な位置と時間の情報と、患者自身の活動を関連付けて、患者の健康状態をより正確に把握できるようになるだろう。救急搬送時の患者の状態の最新情報など、迅速でタイムリーな通信も同様に重要となってくる。

 このような医療監視の例は、製造工場のみならず、製品にもあてはまる。

 リアルタイム通信でデバイスの故障がいつ、どこで発生したかを追跡し、その情報を温度や湿度、振動、その他のコンテキストパラメータと組み合わせることにより、製品の使用状況と故障モードを明確に分析し、次世代のデバイスまたはシステムの改善時に、設計要件にフィードバックすることができる。これにより、全体的な品質の向上、製造コストの削減、ユーザーエクスペリエンスの向上の可能性が生まれるだろう。

 都市全体の電力供給ネットワークでは、1カ所で生じた不具合が不具合の連鎖を生み、問題の発生源の特定が難しくなるので、停電が「いつ、どこで」発生したかに関する情報をリアルタイムに通信することが重要になる。

 上記で挙げたような例は、データやタイミング、位置が不正確、システムや通信インターフェース、ネットワークの不完全な実装、低信頼性、高遅延、低セキュリティなどさまざまな理由によって通信できなかった場合、存在している意味がなくなることになる。

 “GIGO(Garbage In, Garbage Out)”、これは「ゴミを入れればゴミしか出てこない」という慣用句なのだが、その慣用句通りになるだろう。精度が低かったり、遅延が150ミリ秒以上であった場合、消費者向けのガジェットやホームネットワークであれば許容範囲内かもしれないが、産業用の場合はそうはいかない。産業用には最大限のパフォーマンス、堅牢性、セキュリティ、信頼性が極めて重要な要素となる。

 センチメートルレベルの測位精度とマイクロ秒単位のタイミング精度へのニーズは、常に付き回る超低消費電力という要件にも合致している必要がある。さらに、自動車向けの耐久性、耐ノイズ性、セキュリティ、-40℃~+105℃までの温度範囲(車載用ICのための信頼性試験の規格に対応)も満たす必要がある。

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