IIoTの接続オプションを拡大するNB-IoT
産業用アプリケーションの近距離屋内無線接続のオプションは多種多様だが、セルラー通信、特にIoTに必要な超低消費電力レベルにおけるセルラー通信のオプションはほとんどなかった。2015年に業界団体によって策定された長距離・低速・低消費電力通信規格「LoRa(Long Range)」の出現は興味深いものだったが、NB-IoT規格も同様に興味深いものである。
この規格は標準化組織である3GPPによって策定され、GSMとLTEのライセンス帯域で動作する。NB-IoTは、長いバッテリ寿命、深部のカバレッジとペネトレーション、低コストの融合を必要とする屋内・屋外用アプリケーションを目的としている(図6、図7)。
図6:NB-IoTは、主要産業用アプリケーションのサポートエコシステムで、GSMとLTEのネットワークの99.5%以上のIoTカバレッジを保証する(u-blox作成)
図7:u-bloxがMobile World Congress 2016で実施した「ゴミ管理ルート最適化」のデモンストレーションの例。NB-IoT、BLE、Wi-Fiを融合してゴミ箱から情報を収集し、ゴミ箱の収集経路を最適化し、洗練されたデータ解析を適用する方法を示し、燃料消費量の削減、排出量の削減、所要時間の短縮など、明確なビジネスメリットを描き出した(u-blox作成)
従来型のGSMやLTEで満たせる屋外のカバレッジのニーズは95〜99%にすぎない。しかし、セルラーベースのIoTでは、特に重要なアプリケーションや手の届きにくい場所で使用される場合、それ以上のカバレッジが求められる。
具体的には、屋内のカバレッジ率は99.5%以上でなくてはならない。3GPPは、狭帯域技術を用いたカバレッジの強化を通じてこの問題の対処に取り組んでいる。最大16回のデータ送信手法と、スタンドアロンのガードバンドを利用することによって、GSMと比較して、NB-IoTのカバレッジを20db向上させることができる。
NB-IoTはセルラーよりも大幅な低消費電力とデータレートで動作しIoTレベルの堅牢性と信頼性も備えている。NB-IoTは、定期的な少量のデータ転送によるガスや水道メーターの監視に適している。そのほかのNB-IoTの主な適応分野は、スマートシティーの街路灯制御、ビルディングオートメーション、人物追跡、農業監視など、適応分野は幅広い。
IoTアプリケーションのセキュリティ
最後に、セキュリティの話をしよう。あらゆるIIoTアプリケーションで安全性と動作の信頼性を保つには、プリント基板、プリント基板の間を接続するケーブルなどに流れるデジタル信号の品質の確保が重要だ。
しかし、最も堅牢なシステムでも、ハッカーからの不正アクセスに対し脆弱な攻撃対象領域が多数ある。通常、このようなことは信頼性の高いシステムでは受け入れ難いことだが、タイミングや位置などのコンテキスト情報が増えるに従い不正アクセスのレベルは劇的に増加するため、頻繁にセキュリティのギャップを識別して埋めていく必要がある。
IoTセンサの場合は、センサからマイクロコントローラやワイヤレスモジュール、末端のアプリケーションに至るまで、信頼チェーンが確立されていなくてはならない(図8)。図8は、攻撃者からデバイスを守るために必要なセキュリティ対策をポイントごとにまとめたものだ。
図8:IoTの産業用アプリケーションでは信頼チェーンを確立するためにすべての攻撃対象領域を保護する必要がある(u-blox作成)