ウェアラブルで勝負!学生ITコンテスト「Imagine Cup 2016」世界大会レポート(前編)

取材・文:神谷加代 構成:羽野三千世(編集部)

2016-08-03 07:30

 米国時間7月27~29日、米Microsoftが主催する世界最大の学生向けITコンテスト「2016 Imagine Cup World Finals」がシアトルの本社で開催された。14回目を迎えた今年は、世界35カ国からの代表チームが出場。日本からは国内予選を勝ち抜いた筑波大学が優勝を目指して闘った。現地から同コンテストの様子をレポートする。


シアトルでの世界大会に出場した筑波大学グローバル教育院 エンパワーメント情報学プログラムに所属する4人。左から村田耕一さん、上原皓さん、江國翔太さん、朝倉靖成さん

のべ165万人以上が参加する世界最大の学生ITコンテスト

 Imagine Cupとは、Microsoft創始者Bill Gatesの発案で2003年にスタートした学生向けのITコンテスト。社会の課題解決に役立つソリューションや、新たな価値観を与えるプロダクトの創造を通して、国際競争力のあるIT人材育成を目指している。今年で14回目を迎えた同イベントには、世界35カ国の学生が参加した。それぞれ自国の国内予選を勝ち抜いたファイナリストらがシアトルに集結し、世界大会優勝を目指して同世代が競い合う。この10年間で参加した学生は190カ国のべ165万人以上を突破。世界最大の学生向けITコンテストが今年も幕を開けた。

 Imagine Cupは、インタラクティブな遊びの体験を与える「ゲーム部門」、病気や災害、貧困、人権など社会課題をITで解決する「ワールドシチズンシップ部門」、既成概念を打ち砕くサービスやテクノロジーの新たな使い方を提案する「イノベーション部門」の3つの部門に分かれる。日本からは、イノベーション部門にエントリーした筑波大学の“Biomachine Industrialチーム”が世界大会への出場を決めた。世界大会では、それぞれの部門で優勝に選ばれた計3チームが最終決勝戦に進み、その中から勝者が決まる仕組みだ。


「ワールドシチズンシップ」部門に登場した中国チーム

“30倍の視力”が手に入る視覚拡張デバイスで勝負!

 大会初日は3部門に分かれて、各国のチームによるプレゼンテーションが行われた。各チームには、それぞれ40分の持ち時間が与えられ、機材セットアップに10分、プレゼンテーションに10分、デモストレーションと質疑応答に20分という時間配分で進めていく。もちろん、プレゼンテーションや質疑応答は全て英語で行われる。Imagine Cupではプロダクトやソリューションの完成度も重要ではあるが、参加チームの多くは英語が第2外国語。そのため、専門的な知識を持つ審査員を前にして、どれだけ英語でアピールできるかが勝敗の行方を左右する。


日本代表・筑波大学Biomachine Industrialチームのプレゼン

 筑波大学のBiomachine Industrialチームが発表したのは、人間の視覚機能を拡張することができるウェアラブルデバイス「Bionic Scope」だ。遠くのもの見たいときに、奥歯を噛みしめるだけでズームインし、意図的に大きな瞬きをすることでズームアウトすることで、見たいポイントを鮮明に拡大できる。脳から神経を通じて目の周りの筋肉へ送られる電位信号を特別なセンサで皮膚の上から読み取り、その信号をもとにカメラを制御する仕組みだ。


筑波大学Biomachine Industrialチームが開発した視覚拡張デバイス「Bionic Scope」

 これまで、視覚を拡張する双眼鏡のようなデバイスは、見える範囲が限られていたり、手でレンズを合わせるなどの操作が必要だった。しかしBionic Scopeを使えば「30倍の視力をハンズフリーで自由に操作できる」と学生たちは審査員にアピールした。

 Bionic Scopeは光学30倍ズームが可能であり、電位信号を用いた視覚拡張デバイスのインターフェースは特許も出願中だ。ちなみに、Bionic Scopeを開発するきっかけになったのは、人気SFアニメ「攻殻機動隊」だ。学生たちが高校時代に好きだったアニメの世界を具現化するところから開発が始まったという。


Bionic Scopeは、コンサート会場やスポーツ観戦で遠くを見るときや、災害時の行方不明者の捜索や警備などに利用できるという

 学生たちは、Bionic Scopeの用途として、コンサート会場やスポーツ観戦で遠くを見るときや、災害時の行方不明者の捜索や警備などに利用できると説明した。また、ビジネスプランとしてもアーリーアダプターを対象にしたクラウドファンディング、技術提供料、コンサート会場でのBionic Scopeの貸し出しなどを提案。単なる技術やアイデアの具現化で終わるのではなく、製品が実社会で広く普及するためにはどのようなビジネスソリューションが必要なのか。その具体例が求められるのがImagine Cupの特徴だ。


プレゼンテーション後の質疑応答。厳しい質問も投げかけれる

 プレゼンテーションが終わると、次は質疑応答だ。審査員からは、開発コスト、製品の耐久時間やバッテリーの持ち時間、製品を試した人数や試用期間など細かな質問が投げかけられた。さらには、「デバイスを装着した人すべてが鮮明に見ることが可能なのか」「世界中の災害現場で使用できるというが、具体的にはどれくらいの人数規模を想定しているのか」「災害時の利用は、ドローンのほうが有効ではないか」といった厳しい質問も投げかけられた。学生たちはこうした質問に対して、英語で答えていく。慣れない英語での質疑応答に途中、詰まる場面もあったものの、学生たちは一つひとつの質問を丁寧に返した。

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