オートデスクは、米国Autodeskがスミソニアン博物館所蔵のアポロ11号司令船「コロンビア」高解像度3Dスキャンデータ作成に協力し、同博物館サイトにおいて7月22日より本データの提供を開始したと発表した。この3Dデータでは宇宙船の外部と内部を詳細に見ることができ、これまで学芸員も見ることのできなかった飛行士の手書きメモまで確認できる。ウェブブラウザでの閲覧だけでなく、ファイルをダウンロードして3Dプリントしたり、VRゴーグルで見たりすることも可能。(公式サイト)。
司令船内側の3D画像、シートとコントロールパネル(Smithsonian / Autodesk)
司令船の3Dプリントモデル(Smithsonian / Autodesk)
司令船の外側をレーザースキャナーでデジタル化(Smithsonian / Autodesk)
司令船内側の3D画像に写った宇宙飛行士手書きのカレンダー(Smithsonian / Autodesk)
Autodeskは、スミソニアン博物館が2013年に開始した3Dスキャニングとイメージングプログラム「Smithsonian 3Dコレクション」(3d.si.edu)をテクノロジパートナーとして支援している。本プログラムではこれまでにも、ライト兄弟が開発した「フライヤー号」、超新星残骸のカシオペア座A、鯨の化石、6世紀の仏像など数々のコレクションが登録されており、公開されたコレクションは誰でも閲覧・ダウンロードすることが可能。
今回のアポロ司令船では、Autodeskは3Dスキャニングと3Dモデルデータの作成を担当したが、表面に使用している反射材が原因で市販の3Dスキャナでは読み込みが正確に行えなかったほか、内部のダッシュボードは多数の小さな部品で複雑に構成されているため、難しい作業になったという。
これに対し、同社では、市販の3Dスキャナを改造して独自の機材を開発した上で、複数個所でスキャンしたデータを1つのモデルに統合するためのアルゴリズムや、膨大なデータを処理するためのソフトウェアを開発して取り組んだ。スキャンは7種類の異なる方法で実施し、測定した箇所は約1兆カ所、データ容量は圧縮しても1TB以上になり、非常に詳細なマスタモデルを完成させた。
司令船のスキャニング作業を通じて、新たな発見もあった。司令船のハッチを覆っている保護カバーは、1971年にスミソニアン博物館のコレクションに加わってから数回しか取り外されたことがなく、同博物館のキュレーション担当や所蔵担当は今回初めて、これまで見ることができなかった司令船の内部を垣間見ることができたという。
これまで把握されていなかった「宇宙飛行士の落書き」数点が見つかっている。内容は宇宙管制センターから入手した数値や情報を壁や機器パネルに書き留めたものや、手書きのカレンダーもあり、着陸日を除くすべての日にX印が付いていたとのこと。これらの落書きも3Dモデルで見ることができる。